2016年10月31日月曜日

10月授業内容

1.10月授業内容
2.今月の課題
3.今後の授業スケジュール
4.お知らせ


1. 10月授業内容


1.0 <スタートアップ>


 割愛します。


1.1 <プライマリーコース『SLロボロコ』>



 割愛します。









1.2 <ベーシックコース『ぐるぐる進む君』>



 二足歩行ロボットです。左右の足が交互(こうご)に前後するのだから、歩くのは当たり前?

よく考えてみます。
人間やアシモのように、片足を上げながら歩くほど高度ではありませんから、地面についたまま前後に往復するだけの足に前も後ろもなく、その場で足を摺(す)るばかりでうまく進みません(*1)。
1日目のロボットがこの形態であり、あまりスマートな歩みではなかったでしょう。

 しかし、人間は、ぶかぶかのスリッパを履(は)いたときでも、摺り足をしながら前に進むことができます。
同じ摺り足の動きで後退することもできます。無意識に何かを切り替えています


そうです、重心ですね。2日目で、ちょうちんアンコウのごとく頭から生えた角(?)が、その重心移動メカニズムです。

 もちろん、付ければいいってものではありません。
角の先に付けたタイヤL(カウンターウェイト=重り)に揺(ゆ)り回されるわけですから、足の動きとの同調(位置関係=位相)を考えないと、逆にバランスを崩してすぐに転んでしまいます。

しかし、この位相は30°単位(*2)で調整できますから、後ろに下がる方の足に重心を傾け、前へ出る方の足を浮かせ気味にすれば、見違えるようにスタスタと歩くことができるように変身します。

 その理由を詳しく見てみましょう。


写真のように、ロボットに向かって右側にタイヤLがあるときを考えてみます。
タイヤLは黒矢印(↓)の重力を受けています。この重力は、角を伝って、ロボットを右側に倒そうと作用します。
つまり、向かって右側の足には赤矢印(下向き↓)の力が、左側の足には青矢印(上向き↑)の力が加わり、向かって右側の足は重く、左側の足は軽くなるのです。

 左右の足への重みが変わることで、どんな良いことがあるのでしょうか。


写真は、ロボットの左足がめいっぱい前に出て、これから後ろに下がろうとする瞬間です。
このとき、左足には赤矢印(↓)の力が加わっているため、床との摩擦力が強く働き、滑(すべ)りにくくなります。
そのため、左足を後ろへ動かそうとする力は、ロボット上体を緑矢印(←)の方へ動かそうとする力となって、前進させるのです。

同時に、軽くなっている方の右足は、床との摩擦力が弱いために、滑りながら前へせり出し、次の一歩に備(そな)えることができます。


 もっともっと速く歩かせるために、電圧アップ(電池4→5本)したり、脚(あし)を長くして歩幅を大きく取ったりしてみましょう。
すると、安定感がなくなり、上体がヨタヨタに振れるところを、カウンターウェイト(*3)で相殺(そうさい)し、さらに、足裏を広げて転びにくくします。

または、ラチェット(*4)を知っている人は、スケートのようにスーッと滑らせることも夢ではありませんよ!

二足歩行ロボットというのは、なかなか奥深いテーマなのですよ。


*1 足にグロメットを付けると、後方へ蹴(け)る摩擦力が働き、少し前進するようになりますが、逆に足を前に戻すときには、この摩擦力がじゃまになります。


*2 タイヤLを回す角の根元には、12の歯をもつマイタギアが取り付けられており、これが別のマイタギアと噛(か)み合って回されています。
 つまり、噛み合わせを1つずらして取り付けるということは、角度にして 360÷12=30°ずつ変更できるということですね。

*3 てこの原理により、重いほど、角を長くするほど効く。

*4 一方向へのみ回転させる機構。ミドルコース『ロボワーム』を参照。


1.3 <ミドルコース『ロボワーム』>



 見た目は3輪バイクのようですが、尺取り虫(シャクトリムシ)をモチーフにしたロボットです。

 1日目では、前輪の付いたロッドを前後に往復させています。
この動きは、クランクというリンク機構を用いて、モーターの回転運動を往復運動に換えて実現しています。
しかし、ロッドの往復に合わせて、前輪は前後に転がるだけであり、推進力とはなりません。


ところが、ただ1点の部品(ペグS)を装着するだけで、見違えるように前進するように変わります。
ラチェットという機構で、一方向への回転のみを許し、反対方向へは回らない仕掛けです。


 皆さんの身近なところでは、自転車のペダル(正確にはチェーンで駆動される後輪のハブ内)に使われており、前方向にはしっかり噛み合って回転を伝えますが、逆方向にはチッチッチと音を立てて空回りする仕組みにより、ペダルを休めても車輪は回り続けることができます。


写真は、後輪ハブ(車軸部分)を分解したものです。
大きな力に対応できるよう、ギアの周りにラチェットが3つ付いていますが、基本的な仕組みは、ギアMとペグSの噛み合わせ方と同じです。

 このラチェット機構を実現するために、前輪に重ねたギアMの歯にペグSの角を当てました。
すると、ロッドの往復に合わせて、前輪と後輪が交互に前へ転がることを繰り返し、本体が前進するようになりました。
まるで、尺取り虫が胴体を曲げたり伸ばしたりして進む様子です。



 後輪が前へ転がるのは、ロッドが後ろへ戻る際に前輪が逆回転しないようロックされ、本体(と一体化した後輪)が前輪に引っ張られるようになったためです。
前輪が前へ転がる際は、本体(および後輪)は止まったままか、むしろ反動で少し後退します。











 2日目に、後輪にも同様に往復するロッドとラチェットを組み付けました。
これで、後輪の後退も防げるようになり、推進効率が上がりそうです。


前輪と後輪のロッドが往復するタイミング(のズレ)は自由に変更できますが、一番スムーズに前進するタイミングはどのようなものでしたか?
どうあがいても(前後のロッドで漕ぐタイミングがどんなでも)、前後輪ともラチェットを付けて後退を阻止するのだから、1日目(前輪ラチェットだけ)のロボットよりは前に進みやすくなると思うでしょう?


ところが、ロボットを横から見て、前後のロッドがハの字形に開いたり閉じたりするようなタイミング(前後クランク位相差0°)が最も優れます。
同時に前後するようなタイミング(位相差180°)でクランクに取り付けると、恐ろしく推進効率が下がり、ちょっとの坂道でも上れなくなります(*5)。
クランク位相差90°では、その中間といった感じです。



何故でしょうか?
これは“スケーティング”の要領に似て、先行する前脚と、蹴り出す後ろ脚機能分担ができるからです。
人間が歩けるのも、尺取り虫が進めるのも、地面を捉える後部があってこそ、前部が地面上を浮いて(または滑るように)進めるわけです。

だって、両脚を揃えて前後させても、体が前後に傾くだけで、何を支えにして進めと言えるでしょうか?
『ロボワーム』のように2本脚が前後に付いていても、同じことです。

尺取り虫は知っているのでしょうか。


*5 平坦なら少し進みますが、本体を前後に振る“反動”で動いている程度で、後ろに下がったとしても不思議ではありません。


1.4 <アドバンスコース『ライントレーサー』>


 正確にはプレ・アドバンスコースで、11月からの本コースに向けた練習テーマです。
とは言え、全国大会競技に通ずるアドバンスコースの醍醐味テーマです。
初めてモーターを2個使用し、初めての光センサーで制御します。

もはや組立手順は載っていません。
完成図(四面図)や配線図を参考に、自力で機能を実装していきます。
光センサーの仕組みも学習しました。


 最後の競技は、やはり『ライントレーサーGP』!
ミドルコース『ウォールフォロワー』で用いた段ボールのひし形周回コースを一回り大きくかたどるように、黒い布テープを這わせます。
ゆるいコーナーあり、タイトコーナーあり、サーキットの雰囲気満点です。

 マシンは、黒テープの(光センサーによる白黒検知の境界)に沿って、左右の駆動輪を細かく切り替えながら自律的にコースを周回します。
『ウォールフォロワー』に比べて、2モーターの高速制御によるスムーズな走行を見せつけてくれました。

コースアウトすることも少なく、安定感にまだ余裕がありましたね。
それはそうです、光センサーという立派な半導体制御回路を使っているのですから、輪ゴムに負けるわけにはいきません。

 ただ、全国競技レベルには程遠いですよ。
コースアウトするかしないか、ぎりぎりまでスピードを上げ、光センサーとモーターの応答速度の限界まで追求しますよ。


1.5 <プロ1年目コース『リンクロボット(1)』>


 Autumn(秋)タームとして、多脚リンクロボットを製作し、プログラム制御するまでの3ヶ月が始まりました。
脚がうにょうにょ動き、にょろにょろ走り回る姿態を空想して、否応無しに期待感が高まります。


 1ヶ月目は、2本1組の脚リンクから組み立てていきます。
1組2本の脚だけでも、うねうねと有機的な動きを見せます。
これが6組12本も組み合わさるとなれば、それは壮麗なのか、不気味なのか、いずれにせよ楽しみです。

 図面や説明文の読解、パーツの向きや重ねる順番の照合、ネジやナット締め等、単体でも苦労する脚リンクを複雑に組み合わせるのですから、
空間認知、合理的思考、工作的センス(力加減、器用さ)に始まる、あらゆる能力を総動員して完成せねばなりません。

過去にも、大半の生徒が授業時間内には終わらず、家庭で進めて完成しても動かないか、動きがギクシャクしたり、自己分解してしまったり…。組み立てミスも続出するような代物です。


 2日目に、マイコンボードや無線モジュールを搭載し、モーターを回して脚の動きをチェックしました。
苦労の甲斐あって、その動きは有機的というか、節足動物的というか、初めて目にする者をゾッとさせるものがあります。
非日常性を奏するには十分過ぎるインパクトです。

 次月では、コントローラーとプログラムを使って、思い通りにロボットを操縦します。


1.6 <プロ2年目コース『センサーロボット(1)』>


 いよいよ、2年目コースに突入です!
2年目コースも、エンジニアの卵に知っておいて欲しいエッセンスが色濃く詰まっています。

時に、大学生や大人でも十分手応えのある高度な内容に触れますが、今は完璧に理解できなくても、怖じけず、気取らず、積極的に取り組んでいけば、工学的センスが身に付いていきます。
そういうスタンス(姿勢)とセンス(知見)は、将来の進路にも仕事にも、必ず活きる時が来るものと思います。

知見は、進路や仕事の道を照らすと同時に、選択肢をも増やすものですが、
一方で、知見を広げるというのは、なかなか時間と手間のかかることであり、裏を返せば、とても貴重なことでしょう。
何事も当たり前と思わず、不思議に疑って、存分にセンスを磨いてください。


 さて、これから3ヶ月で学習する『センサーロボット』は、1年目のオムニホイールロボットに、1年目の超音波センサー2個とカラーセンサーを取り付けたものです。
表示部の8×8ドットLEDマトリクスだけ、2年目パーツから7セグメントLED(*6)を取り出して代用したように見えますが、中身が大事ですよ。


中身とはプログラムですね。少ない感覚器官や肢体のロボットでは、それをどう使いこなすかが重要です。
1年目のプログラミングではまだまだ、これらのセンサーを複合的に使いこなせていません。

 元来、思い込みや勘違いだらけの人間に、一縷(いちる)の誤りも許されないプログラミングは向いていません。
今のところ、他にやる主体が無いので、その中で、比較的向いている人や、好きな人がやっているだけです。

プログラムには間違い(バグ)が付き物です。
それどころか、正しいプログラムにすら、それを読む人間(それを書いた張本人すら)が誤った解釈をし、誤った改造(バグ)を入れます。
もう、どうしようもないですね、人間は。
だから、パソコンやスマホのOSもアプリも、アップデートだらけですね。数学と異なり、間違いは仕方がないものとされています。

 しかし、それでも、品質を向上させる方策は必要です。その一つが「フローチャート(流れ図)」なのです。

やはり、文章(プログラム)と図(フローチャート)の直感的理解度・スピードは桁違いです。
書くべき作文の構想を練るときに、短い言葉で流れ図のようなメモを書くのと同じで、全景や過不足が把握しやすくなります。

一人でプログラミングする際は、このフローチャートを描くことが億劫で、ついサボりがちなのですが、およそ3ヶ月後の自分を苦しめます。
それ以上に、他人が製作し、自分とは異次元の設計思想に従った機械やプログラムをメンテナンスすることほど、苦労するものはありません。

そんなときに、設計図やフローチャートがあることでどんなに救われるか、どんなに嬉しいものか、計り知れません。
そんな見方を味わうことになるモノです。



 テキスト以上の詳細な解説はナンセンスにつき割愛しますが、各種のセンサー動作プログラムを試しながら、
せっかくのフローチャートを参考に、少し高度化したプログラムの流れを把握し、いろいろ弄(いじ)ってみてください。


*6 通称「7セグ」で、7本の棒で数字を表示するデジタル表示器のこと。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』世代、これの先進性に惹かれた少年は少なからず、今でもロマンを感じる現役のオジサンですが、高解像度ディスプレイが当たり前になった現代っ子には、ローテクの象徴のように見えるのでしょうか。


2. 今月の課題

 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。

 <スタートアップ/プライマリーコース>
  特にありません

 <ベーシックコース>
  ○ オリジナル3面図課題/裏面の授業まとめ問題
  ○ 上記授業内容を精読する
   (概ね3年生以上/低学年は補助 or クイズ出題形式で)

 <ミドルコース>
  ◎ オリジナル3面図課題/裏面の授業まとめ問題
  ◎ 上記授業内容を精読する

 <アドバンスコース>
  特にありません

 <プロ1年目コース>
  ○ 上記授業内容を精読する(該当テキストページを見ながら)
  ◎ ロボット製作を完了する

 <プロ2年目コース>
  ○ 上記授業内容を精読する(該当テキストページを見ながら)
  ◎ [USSMotorTest3]をベースに、前後の超音波センサーで別々の動作をさせる(1日目)
   例1 前後にかざした手を追いかけるロボット
   例2 前後の壁で跳ね返るよう往復するプロ版『う王さ王』
   例3 前方の障害物で旋回し、後方の迫る敵から加速して逃げるロボット


3. 今後の授業スケジュール


 日付の()は臨時、!は原則外、?は予定の意です。

[東福間]第1・3土原則
   - 10:30~ ロボ・ミドル/アドバンス
   - 13:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ

 ・11/5※, (12※), 19, 12/3?, 17?, 1/7?, 21?, 2/4?, 18?

 ※ミドル以外の方は11/5、ミドルの方は11/12 10:30~お越し下さい。


[東福間プロ]第2・4日原則
   -  9:45~ ロボ・プロ1年目
   - 13:00~ ロボ・プロ2年目

 ・11/13, 27, 12/11, 25, 1/15!, 29!, 2/12?, 26?


[中間]第2・4土原則
   - 13:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ
   - 15:15~ ロボ・ミドル

 なかまハーモニーホール
 ・11/12 第1回 2F会議室1
 ・11/26 第2回 2F会議室1
 ・12/10, 24, 1/14?, 28?, 2/11, 2/25


[小倉北]第1・3日原則
   - 10:00~ ロボ・ベーシック/プライマリ
   - 13:00~ ロボ・ミドル
   - 15:00~ ロボ・ベーシック/プライマリ第2部

 11月は代替施設『商工貿易会館(シティプラザ)』での開催となります。
 ・11/ 6 第1回 シティプラザ501会議室(10:00~)
 ・11/ 6 第1回 シティプラザ603会議室(13:00~)
 ・11/20 第2回 シティプラザ601会議室
 ・12/4, 18, 1/8!, 22!, 2/5, 19


―――――――――― 振替提携教室 ――――――――――
 振替希望は1週間前までにお願いします(許可制)
 振替手数料540円/回をご負担下さい(お引落し)
 所定コースのみお受けします

[八幡東]第1・3土原則
   - 13:30~ ロボ・ベーシック/ミドル

 レインボープラザ 42教室 by 中野司先生
 ・11/12!, 19, 12/3, 17, 1/7, 21, 2/4, 18


[とばた]第2・4土原則/第3土臨時
   - 第2・4土 13:30~ ロボ・全コース
   -(第3  土 10:00~ ロボ・全コース)

 ウェルとばた8F by 菅本進先生
 ・11/12, (19), 26, 12/10, (17), 24, (1/7!), 1/14, 21!


[小倉南]第2・4日原則【振替専用教室として試験運用中】
   - 10:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ
   - 13:00~ ロボ・ミドル

 総合農事センター2F B研修室 by 中野司先生
 ・11/13, 11/27, 12/11, 25, 1/15!, 29!, 2/12, 26


4. お知らせ

 1) 電池交換
  消耗した電池でロボットが動かないと、診断&交換で製作・進行が滞ります。
  自らの責任で学習してもらうべく、下記の対応をお願いします。

  ・市販のバッテリーチェッカーを購入し、自ら残量を管理する
  ・高価なブランド電池を買わない(誤って短時間で消耗します)
  ・なるべく充電池を用い、毎回充電してくる
  ・教室サービス時、原則として電池代4本108円+診断料108円を加算

 2) 宿題ポイント導入【ベーシック・ミドルのみ/中野司先生協同】
  自主的に楽しく取り組んでもらえるよう、10月~オリジナルの図面課題を作成し、第2回目の授業で配布します。
  毎月の授業まとめに則した課題も掲げますので、Blog閲覧の準備をお願いします。
  提出物ごとに1~5ポイント色カードを進呈し、ポイント交換用景品を用意します。

 3) スライドスイッチ強化改造サービス【教室独自】
  新品は高価で、すぐ断線しますので、教室独自の強化改造サービスを始めます。
  断線時は、原則として下記※を適用させて頂きます。

  ・バッテリボックス新品  572円: 問題ありません(故障時は買い替え)
  ・スライドスイッチ新品  789円: 問題はこちら (お薦めしません)
  ・スライドスイッチ改造※  0円: 純正品(断線)⇒改造品への初回交換時
  ・スライドスイッチ修理※ 780円: 改造品の断線時

  ※スイッチ本体を破損・紛失している場合は、原価代789円を加算


東福間・中間・小倉北教室 佐藤

2016年9月29日木曜日

9月授業内容

1.9月授業内容
2.今月の課題
3.今後の授業スケジュール
4.お知らせ


1. 9月授業内容


1.0 <スタートアップ>


 割愛します。


1.1 <プライマリーコース『メカビートル』>


 割愛します。


1.2 <ベーシックコース『ジャイアントホッパー』>



 バッタ型ロボットです。ギアを介してモーターが駆動するのは、本体の側面で時計の針のように回転するロッド3アナだけです。
それだけなのに、後ろ脚を折り曲げたり、伸ばしたりを繰り返し、尺取り虫のように前進します。どうしてでしょうか?



 ロッド3アナが1回転毎に後ろ脚を跳ね上げています。
このような回転軸を利用した周期的な運動機構をカムと呼び、例えば、自動車のエンジンが呼吸(吸気と排気)を切り替えるために使われています。
後ろ脚が跳ね上がる時に関節が折れ曲がって、後ろのタイヤLを前方へ引きずります。
この時、本体は進みませんが、次に輪ゴムの力で脚が伸びる時、後ろのタイヤLは微動だにせず、前輪のタイヤSが転がりながら本体を前へ進めます。




 後ろのタイヤLは回転しないのに、どうして前進するよう都合良く引きずられたり踏み止まったりしてくれるのでしょうか?
タイヤLは回転しないのですよ。だったら、タイヤLは動かず、後ろ脚の屈伸運動に合わせて本体(前輪)が前後に往復するだけではないでしょうか
(尺取り虫も、次の一歩を迷ってそのような動きをすることがありますね)

 それは摩擦力(滑らないぞ!という力)の効き方が違うからです。
ちょっと難しいのですが、脚を折り曲げる(引っ込める)時タイヤLを斜め前方上向きに引き上げる力が働き、重い本体を後退させるほどの地面との摩擦力はなくなります
その結果、タイヤLの方が引きずられるのですが、逆に脚を伸ばす時は、斜め後方下向きに蹴り出すので、地面との摩擦力が強力に働き、推進力になるのです。

 消しゴムをノートに軽く当てた場合強く押し付けた場合とでは、滑らせるのに必要な力が全然違いますよね?
また、消しゴムをノートに斜めに当てると、引く時は軽く滑りますが、押す時は摩擦力を強く感じますね。その両方がタイヤLに作用しているのです。
タイヤLが地面から跳ね上がるほどのパワーがあれば分かり易いのですが、ずっと地面を引きずっていますので、見た目では分かりません
タイヤLを消しゴムだと思ってください。


 タイヤLを回転しないよう止めている理由が分かったでしょうか? 試しに、自由回転するようクランクを取り外してみてください。


 最後の競技は“バッタレース”をしました。スピード勝負です。
推進はゴムの弾性力、そのゴムにエネルギーを充填するのがモーターの仕事と言えますから、ゴムはきつく、モーターはパワフルに、というのが理想です。
究極は、有限なモーターパワーをロッド3アナの回転トルク(脚の力)に振るか回転数(脚のスピード)に振るかでギア比を決めたり、それに適した輪ゴムの掛け方や本数を探ったりするのが戦略です。

下記のような素晴らしい改造が生まれていました。
1) モーター軸のピニオンギアギアMへ交換(脚が3倍速く動く)(*1)
2) 側面のロッド3アナ回転中心を端っこ中心へ変更(脚が2倍速く動く)(*2)
3) 2)のロッド3アナに、ロッド5アナを被せ、2)の弱点を解消(*3)
4) タイヤLに代わり、グロメットをはめて、後ろ脚を軽量化(*4)
5) タイヤLのクランク(回転止め)に代わり、ラチェット機構(前方向のみ回転させる)を取り付けて、スーッと滑るように前進する(*5)

多数のベーシックコース修了生に相応しい、奥の深いロボットでした。


*1 力は1/3に弱くなり、モーターが力負けして停止しやすい弱点がありますので、あまり欲張れません。

*2 回転半径が半分(2アナ分⇒1アナ分)になるので、動きの幅(ストローク)が半分になり、あまりスピードアップしない弱点があります。

*3 ロッド5アナの中心を回転軸としても、回転半径を2アナ分とれ、ストロークを減らさずに脚を2倍速く動かせます。

*4 バッタらしい力強い脚ではなくなりますが、電池が弱くても動きやすいですね!

*5 これだけで圧倒的に速かったですね。4教室中、最速だったと思います。ミドルコースレベルの改造でしたが、宮田君ナイス!!


1.3 <ミドルコース『ダンゴム』> (八幡東教室 中野司先生 原著 / 佐藤 改編)



 初登場の変形ロボットです。ダンゴムシのように沢山の足で歩いたり、丸まったりします。

ロボットの動き
 モーターは回転する力しか生み出しませんね。
その回転する力でロボットの足を動かし前進するのか、本体を変形させる(丸まる)のかはどこで決まるのでしょうか。

1日目のロボットは丸まらず、スイッチを切り替えても前進・後退するだけです。
(これだけでも、虫嫌いな人をゾクゾクさせるには十分な仕上がりですが)
2日目のテキストに丸まるためのミソが隠されています。

丸まる改造

 テキストに倣い、写真のようにラチェットをギアに噛ませてみました。
これでスイッチを入れると…、前に進んだり、丸まったりしましたね。 
なぜ2通りの働きをするのか、皆さんは既に理解していると思います。


スイッチを一方に入れて前進するのは変わりませんが、逆方向に入れるとラチェットがギアに噛み、後退する代わりに変形するようになりました。

 ここで、1つ疑問が浮かびます。
ラチェットが噛むと、そのギアは回転できなくなり、ロボットがその場に止まったまま動けなくなるだけではないでしょうか?  
ちょうど車のタイヤを回らないように固定した場合のイメージです。

力の逃げ道

 写真のように、赤矢印のギアを回した場合、隣のギアへ回転が伝わります。
青矢印のギアは回転する以外に動きようがないですね。


 そこで、ギアの土台を変えてみます。
写真のように、ビーム2本にシャフトを1本通し、ハサミのようにクロスさせます。
シャフトにギアを通し、もう1組のシャフトとギアを上部のビーム1本だけに通して噛み合わせます。
(実際に作って体験してみることが理解への一番の近道です)

赤矢印の示すシャフトを回してみます。当然、青矢印のシャフトも回転すると思います。
同時に、なんとなく上部のビームもオレンジ矢印の向きに回転しようとしませんか?
赤矢印のシャフトを急に回そうとするほど(*6)、オレンジ矢印のビームもつられて回りやすいと思います。

 この場合、赤矢印の回す力は青矢印のギアを回すかオレンジ矢印のビームを回すかの2通り、“逃げ道”があるわけです。
力の逃げ道がいくつかある場合、より簡単に動かせる(抵抗が小さい)方に逃げます
その結果、青矢印のギアが回ったり、オレンジ矢印のビームが回ったりします。
回しやすさ(抵抗)が同程度の場合は、両方とも回ることになります。


 ここで、力の逃げ道の1つを閉ざすとどうなるでしょうか。
写真の赤丸のように、ストッパーを取り付けてみました。
このストッパーの役割は、ダンゴムの(ギアと噛んだ)ラチェットと同じで、接触しているギアを回らなくしています。

この状態で、赤矢印のシャフトを回してみてください。
上部のビームをオレンジ矢印の向きにダイレクトに回転させる感じがすると思います。

 なぜそうなるのでしょうか?
赤矢印の力の逃げ道として、ストッパーを破壊して青矢印のギヤを回すよりビームを回した方がはるかに楽(抵抗が小さい)ですね。
その結果、青矢印のギアを回すことなく、ビームを回すことに専念するのです。

これがダンゴムを後退させるか、丸めるかを分かつ仕組みの原理です。
8月の『サカアガリン』、7月の『シュート君』にも使われていますよ。

丸まる仕組み

 力の逃げ道がダンゴムの変形にどのように作用しているのかを見ていきましょう。
モーター軸(ピニオンギア)を、側面のギアMを左からA,B,C,Dと名付けます。

ギアに注目すると、これはラチェットにより回らなくなっています。
全てのギアは噛み合っていますので、このままではモーターは回転できません。
ここで何が起こるでしょう。力は“逃げ道”を常に探しています。


 スイッチを入れると、ピニオンギアは回転しようとしますが、ラチェットにより固定された一連のギアを回すことはできません
代わりに、モーター(頭部)自身が赤矢印の向きに回ることで、ピニオンギアがべベルギアの周りを回ることができますね。

ある程度までモーター(頭部)が回転すると、写真の青丸のように、ダンゴムののパーツ同士がぶつかってしまい、回転できなくなります。
逃げ道は他にないでしょうか?

実験した2本のビーム同士のように、頭⇔胸以外にも、胸⇔腹腹⇔尻の間に、折れ曲がる関節がありますね。
これらが折れ曲がることで、ギアの周りを、の周りを、の周りを回る仕事ができ(*7)、その結果、ダンゴムは丸まっているのです。

 さて、ダンゴムが丸まる仕組みは以上ですが、丸まる動作に不必要なギアがあります
それは、ギアA,B,C,Dのうち、どれを指しているでしょうか?


ダンゴムは、3つの関節で分けられた頭・胸・腹・尻の4部位それぞれに、ギアA,B,C,Dが取り付けられ、関節の両側のギアが互いの周りを回ろうとする(*8)力で折れ曲がっています。
だから、一見無駄がなさそうですが、この力の伝達に寄与していないギアがあります。
つまり、それを外しても丸まる動作に影響はありません(*9)。それはどれでしょうか。
そのギアの記号不必要な理由、そのギアの別の役割を考えてみてください。


*6 物体を素早く加速させようとするほど、それを妨げようとする抗力が大きくなり、その分、大きな力を要します。慣性の法則といいます。

*7 実際は、回転方向を整えるために、間にピニオンギアを介していますが、関節を挟んだギア同士が互いの周りを回る作用としては同様に考えられます。

*8 どちらがどちらの周りを回っていると考えるかは、基準(カメラの設置場所=動いていないと感じる方)によって変わる相対的なものです。

*9 ギアA,B,C,Dは両側面にあることに注意してください。両側セットで考えます。


1.4 <ロボプロコース『不思議アイテム(3)』>


 不思議アイテムの世界も、最終月を迎えました。

 1日目は、“ラーメンタイマー”を作ります。
時間を計る(というより休め!の指示)命令としては delay がありますので、所望の時間だけ静止した後、ブザーでも鳴らせば一先ず完成ですが、経過状況も知りたいのが人情です。

delay(1000) と命令する度に何かをすれば、1秒毎の経過が分かります。
delay(100) を10回繰り返して、0.1秒単位のカッコイイ表示もできます。
秒数を2桁の数字で表したければ putd2、大きな1文字を表示したければ putch、任意の大きさで円や四角を描画したければ circlerectangle、1ドット光らせたければ write、1音を鳴らしたければ play、メロディを奏でたければ play_rtttl、モーターを回したければ rotate等、いろんな命令が紹介されています。

 サンプルプログラムでは、タッチセンサーの入力検出に listenonPress、繰り返しに forwhile、条件分岐に ifswitch-case を使って、初めに秒数やアラーム方法を選ばせる実用的タイマーに仕上げていました。
中には「ピッ、ピッ」と音を発しながら10秒からカウントダウン表示し始める、その名も時限爆弾の CountBom もありました(*10)。

 最終日の2日目は、ちょっと遊んで一息つくのにふさわしい「人工生命とシンセサイザー」がテーマでした。

 人工生命といっても、8x8ドットのそれぞれを生命体(細胞=セル)になぞらえ、周囲の生存セル数に依存した単純な規則によって誕生・生存・死滅を世代展開していく様子を観察して楽しむものです。“ライフゲーム”と呼ばれます。




それの何が面白いといって、“カオス的”なのです。簡単なルールで動いているのに、先行きが読めないのです。
初期状態のちょっとした違いが全く異なる結果を生み、にわかには予測不可能なパターンを繰り広げます。

ここから(*11)、生命現象や神経回路網の再現、人工知能の研究へと発展していきました。
コンピュータの登場がこのような楽しみと学問の道を開いたのですね。

 シンセサイザーの方は、先月の“電子ピアノ”を改造したプログラムです。
無線リンクしたゲームパッドのボタンが鍵盤になっている点は変わりませんが、アナログスティックを倒す量に応じて周波数を増減させる、エフェクター(ピッチシフター)機能が搭載されました。

プログラム上では、“play(NOTE_C4 + effect)”のように、音程を表す記号 NOTE_** にスティック傾倒量 effect を足しています。
“ド”に数値を足すって、どういうことでしょうか?

 先月の1日目に学びました。音程記号は、プログラムの転送前(コンパイル時)に音の周波数に置き換えているのです。
例えば、440Hzの“ラ”ボタンを押しながら、+54相当分スティックを前に倒せば494Hzの“シ”に、-48相当分スティックを引けば392Hzの“ソ”に変わる、という具合です。

 デジタルの世界では、すごく簡単な計算で豊かな効果を演出できる、という一例です。
ロック・ギタリストにでもなった気分で、ブイブイ演奏してみましょう。

 ここまでで、もう、光と音を自在に操れる魔法を手に入れたようなものです。


*10 ジョーク・プログラムなのですが、むき出しの配線や電子基板の中で赤いLED数字がカウントダウンを始めると、かなり物騒な雰囲気を醸し出します。
 テロが心配される国では冗談どころか、誤解から自身を危険に晒すことになるでしょう。
 日本でも、公共の場でいたずらに利用するのは厳に慎みましょう。警察沙汰になるか、配線が切断される被害(?!)に合うこと請け合いです。

*11 ライフゲームそのものというより、上位概念のセル・オートマトンと呼ばれる格子状セルで構成した計算機モデルから。


2. 今月の課題

 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。

 <スタートアップ/プライマリーコース>
  特にありません

 <ベーシックコース>
  △(難解につきスケッチ免除)
  ○ 上記授業内容を分かるまで音読する
   (概ね3年生以上/低学年は補助 or クイズ出題形式で)

 <ミドルコース>
  △(難解につきスケッチ免除)
  ◎ 上記授業内容を分かるまで音読する

 <プロフェッサーコース>
  ◎ 上記授業内容を分かるまで音読する(該当するテキストページを見ながら)
  ◎ [CountTimer4]をベースに、LEDドットパターンで経過秒数が分かるタイマーを作る(1日目)
   Lv.1 8個の点を順次点灯または消灯させる8秒タイマー
   Lv.2 60個の点を順次点灯または消灯させる60秒タイマー(ヒント:%演算子)
   Lv.3 表示方法を独自に工夫した3分間(180秒)タイマー

  ◎ [TonePS3/4/5/6]をベースに、音程を“CDEFGAB”に代わり、
   “どれみふそらし”と分かり易く表示


3. 今後の授業スケジュール


[東福間]第1・3土
   - 10:30~ ロボ・ミドル/アドバンス
   - 13:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ

 10月は10/1, 15です。11~1月も原則通りの予定です。


[東福間プロ]第2・4日
   -  9:45~ ロボ・プロ1年目
   - 13:00~ ロボ・プロ2年目

 10月は10/9, 23です。11・12月も原則通り、1月は1/15, 29の予定です。


[中間]第2・4土
   - 13:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ
   - 15:15~ ロボ・ミドル

 ・10/ 8 第1回 2F会議室1
 ・10/22 第2回 3F会議室2

 11~1月も原則通りの予定です。


[小倉北]第1・3日
   - 10:00~ ロボ・ベーシック/プライマリ
   - 13:00~ ロボ・ミドル
   - 15:00~ ロボ・ベーシック/プライマリ第2部

 ・10/ 2 第1回 5F小セミ
 ・10/16 第2回 5F小セミ

 11・12月も原則通りの予定ですが、11月はムーブイベントの為、
 代替施設『商工貿易会館(シティプラザ)』での開催となります。
 1月は1/8, 22の予定です。


[小倉南]第2・4日【振替専用教室として試験運用スタート】
   in 総合農事センター(小倉南区横代東町1-6-1)
   by 中野司先生

   - 10:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ
   - 13:00~ ロボ・ミドル

 ・10/ 9 第1回 なし
 ・10/23 第2回 2F B研修室

 振替希望はなるべく1週間前までにお願いします。
 指導リソースが限られますので、所定コースのみお受けします。
 11月以降も原則として第2・4日曜日に開催予定です。
 振替手数料540円/回をご負担下さい。


4. お知らせ

 1) ロボット教室全国大会ビデオ
  8/20(土)に東京大学で開催された第6回全国大会が『キッズステーション』で放送されました。

https://www.youtube.com/watch?v=q6OeL6fhNR0

  ナレーション音声が消えておりますが、出場者のレベルの高さが感じられます。
  もしくは、関連動画からダイジェスト版をご覧下さい。

 2) 電池交換
  消耗した電池でロボットが動かないと訴える生徒さんが多く、診断&交換で製作・進行が滞ります。
  10月より、原則として電池代4本108円+診断料108円を加算させて頂きますので、
 自らの責任で学習してもらうべく、下記の準備をお願いします。いずれも100円ショップで入手できます。
 - 市販のバッテリーチェッカーを購入し、自ら残量を管理する
 - なるべく充電池を用い、毎回充電してくる

 3) 宿題ポイント導入(東福間・中間・小倉北・八幡東教室)
  形骸化しがちな図面スケッチですが、億劫な気持ちは良~く分かります。
  自主的に楽しく取り組んでもらえるよう、10月~オリジナルのスケッチお題を作成し、配布することにします。
  毎月の授業まとめに則した課題も掲げますので、Blog読者未登録の方は招待メールをご用命下さい。
  提出物ごとに1~5ポイント色カードを進呈し、ポイント交換用景品を用意します。

 4) スライドスイッチ改造サービス
  今年に入り“改良”されたはずのスライドスイッチで、断線事故が多発しております。
  新品は高価で、また断線しますので、教室独自の強化改造サービスを始めます。
  断線時は、原則として下記※を適用させて頂きます。

  ・バッテリボックス新品  572円: 問題ありません(故障時は買い替え)
  ・スライドスイッチ新品  789円: 問題はこちら (お薦めしません)
  ・スライドスイッチ改造※  0円: 純正品⇒改造品への初回交換時
  ・スライドスイッチ修理※ 780円: 改造品の断線時

  ※スイッチ本体を破損・紛失している場合は、原価代789円を加算

  小学生の使用を前提としない設計で、本部に強いクレームを申し入れております。
  純正品が断線してもお子さんを叱らないで下さいね。
 (モーター、タッチセンサー、改造品が断線するようなら、扱いが荒いです)

 5) 小倉南教室(仮称)の来春開校に向けて
  これまで、特に小倉北教室(日曜日)へお通いの方には、振替体制の不足を申し訳なく存じておりました。
  八幡東教室 中野司先生に、小倉南区での日曜日開校を検討頂いております。
  正式な開校・場所の決定まで今暫く時間を要しますので、当面、振替専用教室として試験運用スタートします。
  10/23(日)~原則として第2・4日曜日に開催予定です。
  正式開校・転属までは振替手数料540円/回をご負担下さい。


東福間・中間・小倉北教室 佐藤

2016年8月31日水曜日

8月授業内容

1.8月授業内容
2.今月の課題
3.今後の授業スケジュール
4.ひと言


1. 8月授業内容


1.0 <スタートアップ>


 割愛します。


1.1 <プライマリーコース『モッテクテク』>


 割愛します。









1.2 <ベーシックコース『クルリン』>


 でんぐり返りロボットです。モーターで回す長い腕が地面を突くからでんぐり返るんです。
単純ですし見ていて当たり前、何が面白いんだ!?と言うとそれで終わります。

しかし、座って静止させた状態からこのロボットの動きを予測するのは難しく、先生も最初は分かりませんでした。


 事実、腕を後ろ向きに回すと前転し、前向きに回すと後転するという、予想外な動きを見せます。
実際は、前転はできますが、(人に似せて)前方向にしか曲がらない脚(ももの部分)のせいで後転はできません

後転時は、重力などで脚がまっすぐなままになり腕の回転半径をはみ出るのででんぐり返るまでは至(いた)らず、ちょうど脚をピンと伸ばした腕立て伏せか、バタフライのような状態に陥(おちい)ります(*1*2)。

 長い腕の先を地面に突かせて重い本体を起こすには、回転軸に強大な力(トルク)が必要です(*3)。
おなじみの1/9減速ギア機構がモーターからの回転を遅くしてトルクを9倍に上げていますが、腕が長い分、何かの拍子に本体や持ち手に引っ掛かると(イタタタ…)、てこの原理で強大な逆向きの力が回転軸を止めようとし、ギヤに負担が掛かってガリガリ音とともに噛合せが外れ、修理することもしばしば。


 また、でんぐり返り時の衝撃が激しいので、頭が割れたり、電池が外れたりしないよう、次のような強化緩衝策(かんしょうさく)を立てておくことも、頑丈に作る秘訣(ひけつ)でした。
1) 頭部をロッドとペグでつなぎ留める(フランケンシュタイン?)
2) 頭部に輪ゴムを巻く(ミイラ?)
3) 電池ボックスに輪ゴムを巻く
4) 顔面や後頭部に、タイヤやグロメット(ゴムリング)を取り付ける

 それにしても、今回のロボットは元気いっぱいというか、バッタンバッタンと動きが激しく、音も騒がしいロボットでした。顔面が外れちゃうね!


*1 腕を回しながら、額(ひたい)を床に打ち付けつつ、「申し訳ございません、申し訳ございません」のポーズにも見えましたね。

*2 前転でも後転でも、でんぐり返る条件は[腕の長さ脚の長さ]です。だから、腕を長くするか、脚をもげば(怖い…)後転もするようになりましたね。

*3 長い傘の先っぽで地面に絵を描く時は、短い小枝を使う時よりも、持ち手にかなりの回転力が必要でしょ?


1.3 <ミドルコース『サカアガリン』>



 逆上がりする鉄棒ロボットです。
先月に続き、今月も当時小学2年生のアイデアコンテスト出品作がベースです。(恐るべし2年生…)

 さて、このロボットが逆上がりに成功するまでに、設計上の工夫製作の手順がいろいろありました。
人間の逆上がりとは少し違います。製作を通して、皆さんはいくつ気付けたでしょうか?

1) 周期的に腕と脚(ももの部分)を曲げたり伸ばしたりする機構
 同期した腕と脚の動きは、ずれることなく繰り返されます。
1周期毎に、噛み合わせた脇腹のギアM(腕用)とギアL(脚用)が半回転しては戻るためです。
この周期を決めているのが、腰のロッド3アナ(=ギアM3枚)の回転で、これをクランクにして、脇腹のギアLを往復回転させています。

2) 強靭な腕力と脚力
 てこの原理により、つま先に重たい電池ボックスを付けて脚を曲げるには、強大な力が必要です。
そんな脚も含めて、かかる重力に打ち勝ち、体全体を曲げる腕力は、もっと強力でなければなりません。
その力を生み出しているのが、腰のロッド3アナ(=ギアM3枚)の回転力(トルク)です。

3) 1/27減速機構
 前記で必要なトルクを生むために、1/3減速(ピニオンギアギアM)を3段連ね、モーターの回転数を1/3×1/3×1/3=1/27に落とし、トルクを27倍に増強しています。
最終段でピニオンギアギアM3組並べているのは、伝達トルクを分散させて、ギアの歯を保護するためでしょう。

4) つま先の電池ボックス
 皆さん、足に鉄アレーをくくり付けて逆上がりしますか?
足先が重たそうで、やろうとも思いませんよね。
こんなところに電池ボックスを付けたのは、他に置き場所が無かったからでしょうか?
 そうではありませんね。ちゃんと意図があるはずです。
確かに、脚を持ち上げる時は、かなりのパワーを要するようになりますが、一旦、つま先が頭上の鉄棒より後ろ側に越えると、今度は重力が回転の味方をしてくれるのです。
このとき、脚は十分に曲げた状態ですから、それなりに重たい頭(モーター)と胴体は未だ鉄棒を越えていませんが、先に越えたつま先の電池ボックスが体全体を後ろ側へ引いてくれるのです(*4)。


5) ラチェット付き鉄棒
 いくら強力な腕力があっても、鉄棒をゆるく握っていては体を回転させることができず、懸垂運動がせいぜいです。
手先が滑らないよう鉄棒をしっかり握り、鉄棒(シャフト)自体も回転しないようにしっかり固定することで腕を曲げる力が体を逆上がりさせます
 但し、このままでは、逆さになった後は体を元にゆっくり下ろすことになり、気味が悪いばかりか(*5)、重力の加勢を無駄にして逆上がりを中断してしまいます。
そこで、逆上がりする方向へはシャフトが自由に回転するようにラチェット機構を鉄棒に付けたのです。
このお陰で、勢いよく体を振り下ろして、次回の逆上がりを開始するのに必要な位置まで進めることができるようにもなりました。
土台に設置した補助板も、逆上がりを成功させるのに必要な開始位置を維持する目的です。
本体の調整次第では、不要になるでしょう。

 どうでしょうか。練り込まれた設計思想を感じますね。
オリジナルの2年生作品がどの程度の完成度だったのか、少し気になります…。


*4 胴体とつま先が同程度に重たいとしても、てこの原理により、回転軸(鉄棒)から遠い方の重量物の位置(にかかる重力)がより効きます。

*5 超人的な腕力の体操選手やポールダンサーにも、違和感というか、一種の気味悪さを覚えますが、そんな感じです。


1.4 <ロボプロコース『不思議アイテム(2)』>


 光と音の世界に入って、2ヶ月目です。


 1日目は、“”の続きです。
前回は、楽譜データをRTTTL形式で1曲分丸ごと与えることで自動演奏させましたが、今回は手動演奏です。つまり、電子ピアノですね。

ゲームパッドの16個のボタン(=鍵盤)に任意の音階を割り振り、好きな楽曲を演奏できます。
プログラム上の書き換えだけで済むので、自分が演奏し易いオリジナル鍵盤に仕立てることなど、朝飯前です。


 さて、正しい音程で奏でるには、プログラム上で“ド・レ・ミ…”に相当する記号“NOTE_C4, NOTE_D4, NOTE_E4, …”を使って指示すれば良いので簡単ですが、そもそもマイコンが“ドレミ”で分かるのかという問題があります。

実は分からない(*6)ので、プログラムの転送前(コンパイル時)に、ドレミを音の周波数に置き換えているのです。
例えば、オクターブ4の“ラ”は周波数440Hzなので、記号"NOTE_A4"を数値440に変換しています。
オクターブ5の“ラ”(NOTE_A5)は2倍の880Hz、逆にオクターブ3の“ラ”(NOTE_A3)なら半分の220Hzです。

1オクターブの間には、半音(*7)で数えて12音ありますので、
難しい計算になりますが、音程が半音上がると、周波数は約1.059倍になり、
1オクターブ上がって(半音12個分、1.059を12回掛けて)2倍の周波数になる関係です。

“シ”と“ド”の間には黒鍵がないので半音、周波数が約1.059倍になる関係です。
“ド”と“レ”の間には黒鍵があるので全音、周波数は約1.059×1.059=1.122倍の関係です。
人間にはこんな計算やってられませんね。やはり記号を使いましょう。

 ゲームのキャラクタのように、上下左右ボタンでLEDマトリクス上の十字や任意の表示パターンを動かす毎に異なるを出したり、パッドを振動させたりするプログラムにも触れました。

描画の始点(左上)となる座標(x, y)の値に基づき、パターンが画面の端に当たったかを判定するために、OR表現を用いたif文“if( x<0 || x>5 ) {○○}”を学びました。
これは、「もし、x<0 または x>5 なら、○○を実行せよ」という意味です。

パターンが画面からはみ出ないよう始点の座標(x, y)の値を有効範囲に制限するために、constraint命令を使用しました。

 2日目は、“”を計算で操ります。
既に、直線を描画する方法をいくつか知っています。

<方法1> 1点ずつ座標を指定して、8ドットを順に点灯させる
<方法2> 1コマの絵のように、8×8ドットのパターンとして描画する
<方法3> 上記を洗練し、座標変数(x, y)とfor文を使って実現する


 <方法1><方法2>は、直線を引くだけにしては面倒ですし、変更も大変な作業です。
<方法3>ができるのなら、それは文句なしのスマートな方法ですが、x座標のみを変えながら水平線か、y座標のみを変えながら垂直線を描くのが精一杯ではなかったでしょうか。


斜めに線を引くには、1ドット毎に難しい座標計算が必要そうです。
これを楽にするために、一次関数(中学2年数学)の考え方を導入しました。

x座標とy座標との間にある定まった関係を式で表したもので、例えば、画面の対角線を引く場合は、y=x という関係式を与えます。
yとxの値は常に等しい」という意味ですが、「yはxと同一に変化する」とも読み取れます。
ここで、“for (x=0; x<8; x++) { y=x; }”のようにx値を変化させると、(x, y)(0, 0)→(1, 1)→・・・→(7, 7) と変化しますので、これらのドットを順次点灯すれば良いのです。

y=2x なら、yはxの2倍大げさに変化しますので、斜め線は急峻にそり立ち、
y=0.5x なら、yはxの半分しか変化しませんので、斜め線は緩やかになります。
一次関数のグラフ表現では、斜め線の向きを表す 20.5 を“傾き”と呼びます。
y=-x なら -1 のように、マイナスの傾きも考えられます。
プラスの傾きを上り坂と見なせば、マイナスの傾きは下り坂になります。

 また、y=x+4y=3x-2 のように、最後に定数を足し引きすると、元の y=xy=3x の直線を上下(y座標方向)に数値の分だけ平行移動させた位置に描くことになります。
一次関数のグラフ表現では、直線の上下移動を表すこの定数を“切片(せっぺん)”と呼び、これは x=0 のときのyの初期値のようなものです。

 このように、数学では一次関数の式を y=ax+b(傾きa、切片b)の形で表しますので、プログラムにおいても直線描画に限らず、for文でx値を変化させながらy値を計算する手法(*8)がよく取られます。

<方法3> 一次関数とfor文を使って描画する

と書き直しましょう。

 なお、直線描画に限っては、もっと便利なline命令が用意されていました。

<方法4> 直線の始点座標(x1, y1)と終点座標(x2, y2)をline命令に与える

これを使えば、内部で<方法3>を代行してくれます。

 このように、特にCG(コンピュータグラフィクス)の分野では、誰かが用意してくれた便利な部品プログラム群(*8)を利用するのが当然のことです。
そうせずに、何でも最初から自分で書くのは大変過ぎてやってられません。


 最後に、コンピュータ内部で文字を管理し、表示するための文字コードについて軽く学習しましたが、今回は、テキストに説明している以上のことを割愛します。

 本当に、ロボ・プロは内容が盛り沢山ですね。テキストを見ながら、なるべく曖昧な点を残さぬよう、しっかり復習と課題に取り組んでください。


*6 音楽専用のICチップなら解釈してくれるものもあります。

*7 ピアノの鍵盤で、黒鍵を含めた隣同士の鍵の音程のこと。五線譜や音符に付く#や♭は、半音上げ下げする記号。

*8 yの計算結果が小数になる場合でも、変数yをint(整数)型で宣言していれば自動的に整数に切り捨てられますので、整数のみが許されるCG座標を表すのに便利です。
 <例> 6.25 ⇒ 6、0.81 ⇒ 0

*9 一般に、ライブラリ(library)と呼びます。有用な書物を集めた図書館ですね。


2. 今月の課題

 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。

 <スタートアップ/プライマリーコース>
  特にありません

 <ベーシックコース>
  ○ 4面図スケッチ(専用方眼紙)
  ○ 見取図スケッチ(テキスト最終ページ/難しければ写真の模写から)
  ○ 上記授業内容を分かるまで音読する
   (概ね3年生以上/低学年は補助 or クイズ出題形式で)

 <ミドルコース>
  △(難解につきスケッチ免除)
  ◎ 上記授業内容を分かるまで音読する

 <プロフェッサーコース>
  ◎ 上記授業内容を分かるまで音読する(該当するテキストページを見ながら)
  ◎ 下記の何れかで、任意の曲目を演奏し、2日目に披露する(1日目)
   ・[RTTTL_Kaeru]をベースに、RTTTL楽譜データを書き換え、自動演奏
   ・[TonePS2]をベースに、必要に応じて音程割り当てを変更し、手動演奏
  ◎ [MatrixLineTurn]をベースに、for文とline命令を使って十字線を回転させる


3. 今後の授業スケジュール


[東福間]第1・3土
   - 10:30~ ロボ・ミドル
   - 13:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ

 9月は9/3, 9/17です。10~12月も原則通りの予定です。


[東福間プロ]第2・4日
   -  9:45~ ロボ・プロ1年目

 9月は9/11, 25です。10~12月は原則通りの予定です。
 9/25欠席者は、9/11 13:00-15:00 を連続受講下さい。


[中間]第2・4土
   - 13:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ

 ・9/10 第1回 3F会議室2
 ・9/24 第2回 3F会議室2

 10~12月も原則通りの予定です。


[小倉北]第1・3日
   - 10:00~ ロボ・ベーシック/プライマリ
   - 13:00~ ロボ・ミドル
   - 15:00~ ロボ・ベーシック/プライマリ第2部

 ・9/ 4 第1回 5F小セミ
 ・9/18 第2回 5F小セミ

 10~12月も原則通りの予定ですが、11月はムーブイベントの為、
 代替施設『商工貿易会館(シティプラザ)』での開催となります。


4. ひと言

 お盆を如何お過ごしでしたか? 我が家では、帰省(大分県)の道中に阿蘇方面を旅行するのが毎年の恒例になっておりますが、今年はかの震災があり、道路寸断の懸念から南阿蘇まで足を伸ばすのは憚(はばか)られました。
 しかし、微力ながら、熊本の観光復興に貢献したいとも思います。かくして、阿蘇山の北方(小国町~産山村)で寝泊りすることになるのですが、訪れるキャンプ場から牧場、町外れの商店主まで、「客足がなかなか回復しない」と口々にこぼしていました。
 年間で最もピークとなるはずの盆休み期間とて、どこも賑わっているとまでは言えませんでした。私が心理的に敬遠してしまった南阿蘇周辺は、もっと苦境に立たされていることが想像に難くありません。
 例年通り立派に、高速道路の無駄な渋滞に嵌(はま)りながら、複雑な心境で大好きな熊本を離れました。


東福間・中間・小倉北教室 佐藤