2015年5月31日日曜日

5月授業内容

1. 5月授業内容
2. 今月の課題
3. [東福間]6月授業スケジュール
4. [小倉北]6月授業スケジュール
5. 7月授業スケジュール(予告)
6. ひと言

1. 5月授業内容

<ベーシックコース『コマ回し君』>

(初月スタートアップ講座の内容は割愛します)
 ロボットというより玩具と呼べそうな、コマ回しマシーンです。
タッチセンサーを押してコマを加速させている間は、コマが本体に留まり、加速を止めた途端、回転の勢いで自動的にコマ自身を床上に押し出すという優れものです。いつものキットで、アイデア次第ではこんなのも作れるという新鮮な驚きを感じさせます。

 さて、コマ回しを成立させるメカニズムは、マシーンとコマの双方にあります。

 マシーン側に必要なのは、できる限り高速にコマを回転させることです。
本体上部に取り付けたギヤLが、どえらい速さで回りますね。
どれくらい速いのでしょうか? モーターの回転と同じでしょうか?
だったら、モーターにシャフトを一本つき刺して、ギアLを付ければ済む話です。

 実際は、ギアの噛み合わせを工夫して、回転スピードを上げています。
これを増速(ぞうそく)といいます。
マシーン内部か、テキストp.7の写真を見てください。

モーターギヤMピニオンギヤギヤM ピニオンギヤギヤL
の順に回転を伝えていますね。
ここで、“=”は、同一のシャフトに通して一緒に回転しているため、回転スピードが変わらないことを表しています。これを同軸(どうじく)といいます。
一方、“⇒”は「大きいギヤが小さいギヤを回している」箇所であり、ここで回転スピードが上がるのです。

 どれくらい上がるかは、ギヤの歯数の比で決まります。歯数を(数字)で表すと、
本体内部で、ギヤM(24) ⇒ ピニオンギヤ(8)の伝達が2段と、
本体上部で、ギヤL(40) ⇒ コマのギヤM(24)の最終段とで、
24/8×24/8×40/24=3×3×5/3=15倍の増速作用があります。

ギヤの組み替え次第で、計算上はこれ以上の増速比を出せますが、今回の15倍速でも、モーターの回転速度は無負荷(空回り)時より大分遅くなり、「重くしたコマの加速にも少し時間がかかる」くらいマシーンの限界能力に近いですから、これ以上欲張っても大差ない(*1)かもしれません。
全エネルギーをコマの回転運動に使い尽くすという意味では、とてもピュアなマシーンです。

 コマ側に必要なのは、いかに安定して回転が長時間続く形にするかという点です。
ロボットキットの中から、軸としてシャフト、回転体として円形部品(*2)を選択するという制約下では、
1) コマを重く(なるべく外周部を重くして慣性モーメントを大きく)、
2) 重い部品は回転中に地面に接触しない程度に下の方へ(重心を低く)、
という2点をポイントとしておきますが、過去には、
重心を高く作ったことで不利なふらつき(歳差運動)を、下部に履かせたホイールの縁と地面との低摩擦な接触で抑制し、好記録を出した工夫例も見られました。

 さて、2日目の最後に、各自のコマ回し時間を競いました。
地面の材質(ザラザラの机か、ツルツルの鉄板か)にも左右されますが、上記2点を押さえたコマなら、30秒以上回り続けることができました。
各自が試行錯誤する中で、50秒を超え、1分を超え、ついに100秒を超えるものまで登場しました。

 逆に、弱かった電池をさらに消耗して、最後には加速できなくなるという苦杯をなめた人もいましたね。

 市販品のコマとは違って、自ら色々とバランスを変えて試せる点においては、遊びながら考えさせる優れた教材になったと思います。
ご家庭でも是非一緒になって探求したいテーマですし、そのような大人と一緒に考える時間を通して、一段と物理に目覚めていくものと思います。

 学術的にも、コマの原理は、何年も勉強し続ける人もいるくらいとても奥深いもの。
高校物理を学んで、また改めて興味を持ってもらえたらいいですね。

*1 小倉北教室において、先生は、コマ上端のギヤM(24)をピニオンギヤ(8)に替えて、さらに3倍(トータル45倍!)の増速比を稼いで、100秒超えの記録保持者にも圧勝しました。
ジェットエンジンの始動のように、加速完了まで10秒くらいかけて音程が高まるようなカッコイイものですが、白状すると、これは東福間教室に出席した5年生のアイデアを盗用したものです。

*2 必ずしもタイヤ・ギヤのような円形部品を使う必要はなく、回転軸(シャフト)に対して対称となるような配置(点対称)なら、他の部品でも使えます。
例えば、タイヤLのホイール穴にペグを4本挿して重くした工夫例がありました。


<ミドルコース『つなわたり君』>

 ピンと張った紐を伝うロボットですが、1日目はロープウェイ、2日目は一輪車でサーカスの綱渡りをするようなロボットと、形態を大きく変えます。
ここまで作り変えるテーマは、当教室が始まって以来、初めてです。面白いですね!

 学習ポイントは“重心”です。ロープウェイ型ロボットは、ローラーだけ紐の上に掛けて、重い本体を吊り下げていますから、重心は、見た目通り、本体の中心部にあって、支点(紐と接するローラーの最下点)より下に位置します。

重心に集中して重力が掛かると考えてよいため、支点は真下に引っ張られるものの、
紐に引っ掛けられているので、安定して支えられます。
ゴンドラが風に煽られて、重心が支点の真下からずれても、しばらく揺れるだけで、また元の安定した姿勢に収まります。

 ここで、このゴンドラを逆立ちさせるように、ローラーの上端を紐の上に置こうとしたら、どうなるでしょうか?
支点(紐との接点)より上にきた重心が重力で引っ張られる結果、横にコロッと半回転しながら落下してしまいます。
サーカスの綱渡りもこの状態であり、本来は非常に不安定なところ、横に伸ばした両腕や長い棒を傾けつつ、上手にバランスを取っています。
このロボットに、そこまで期待できませんね。

 ところが、2日目のロボット『つなわたり君』は、これを見事にやってのけます。
一輪車に乗った彼の重い胴体は、支点よりかなり高い位置にあって、逆立ちしたゴンドラ同様に不安定そうですが、なかなかどうして、バランスの取れたロボットなら、多少のロープの揺れもお構いなく、スイスイと渡ってしまいます。何故でしょうか?

変わったところと言えば、ハの字形をした長い棒を持っていることです。
それがどうして? 綱渡りサーカスの長い棒と同じじゃない?
いえいえ、ハの字形に垂れ下がった棒の両端に、重い電池ボックスやタイヤを取り付けているところがミソなのです。

これにより、ロボットの重心を支点より下に引き下げることができます。
紐の真下には部品が何もないのに? それでも構いません。
計算上、このロボットの重心は、紐の下の空中に位置することになり、これにより、彼をゴンドラ同様に安定させているのです。


 やじろべえを知っていますか? 同じ原理です。
両端の重りや棒の長さを調整してバランスを取ることが重要ですが、それだけではありません。

左右のバランスだけ気にすればよいシーソーなら、重さの代わりに、支点からの長さ(座る位置)を調整してもよいのですが、やじろべえは、さらに、重心が支点の下にあることが必要です。

ですから、あまり棒を短くすると、重心がどんどん上がって、支点に近づくほど不安定になってしまいますので、要注意です。







<アドバンスコース『教室ロボコン ~Robo Fight~』>

 1ヶ月目の授業です。
8月の全国ロボットコンテストを意識させるタイトルと内容になっています。
このため、製作の難易度を抑えて、“戦う”ためのルール設計や改造に時間を存分に使えるよう意図されています。

 1日目は、2個のモーターが左右両輪を独立駆動する車両を、戦車型リモコンで手動操縦し、直径60cmの土俵上で相撲対決させます。
操縦テクニックや電池パワーの他に、重さ(≒摩擦力)も大事な勝因のようでした。

 2日目は、これを光センサーを利用した自動操縦ロボットに改造します。
土俵の円は、5cm幅の黒い線で描かれています。
土俵内(白い紙)では直進(両輪を回転)し、黒い枠線を感知すると旋回(片輪のみ回転)する設計が好ましいでしょう。
逆の設計だと、土俵内でぐるぐる回り続けるだけのロボットになりました。
(それでも、相手を弾き飛ばせば勝ちなのですが)

 光センサーが反応しない失敗例が3点ありました。

1) 黒い線の印刷が薄くて光センサーの反応が鈍かったため、 黒テープやマジックで描き足しました。(先生の失敗)

2) 光センサーの応答時間に余裕をもたせるため、走行スピードを落とそうと電池を3本まで減らしたところ、電圧が低くなり過ぎて、光センサーが全く機能しなくなりました。

3) 前記の他に反応しない場合がありましたが、モーター用の逆転スイッチ(リモコンスイッチを含む)を経由させた光センサーに、+/-が逆の入力電圧が掛かっていました。

 モーターや豆電球と異なり、センサーやダイオード(LED)類には極性があります。
 原則として、これらの極性素子は電源スイッチ(イエロー)のジャックに挿し、逆転スイッチ類はその後につなぐのが好ましいですが、止むを得ない場合は、なるべくセンサー類を傷めないよう極性に注意して操作しましょう。

 2ヶ月目に、攻撃型ロボットの要素を加え、“教室ロボコン”のルールを設計して、リーグ対戦もしくはトーナメント決戦を開催します。

 

<ロボプロコース『オムニホイールロボット(2)』>

 1ヶ月目に製作したオムニホイール(Omnidirectional Wheel;全方向車輪)ロボットの動きの原理を理解し、思い通りの動きをプログラム上で指示できるようになるまでの2ヶ月目の授業です。

 1日目は、改めてオムニホイール(車輪)の仕組みを考察し、3つの車輪を任意の速さ・向きに回したときの進行方向が“力(ベクトル)の合成”によって求まることを学びました。

 ここでのベクトルは、車輪の回転の向きと速さを、それぞれ矢印の向きと長さで(紙面上に)表したものです。

2つのベクトルの合成は、まず作用点(ベクトルの根元)を重ねて、それが平行四辺形(菱形)の2辺を形成するようにもう2辺を描き足し、作用点から発した対角線(=合力)の向きと長さで表します。

3つのベクトルを合成するには、任意の2つを合成した後、その合力と残りのベクトルをさらに合成します。

様々な練習問題を製図して解きつつ、プログラムの数値に反映して動きを確かめ、どんな3輪の回転の組合せでも、ロボットの進行方向を求めることができるようになりました。

 2日目に、ロボットの回転する動きを考察します。
1日目では、進行方向を割り出すことができましたが、ロボットが向きを変えずに移動(=並進運動)する場合は、これで十分でした。

しかし、実際は互いに離れた3輪による作用点(ベクトルの根元)を一点(例えば、ロボットの中心)に集めて合成するために、本体が回転しようとする力(モーメント)を扱うことができませんでした。

例えば、3輪とも同じ速さで時計回りに回転させる場合、ベクトルの合成結果は長さゼロの“点”となって、ロボットが移動しないことを言い当てますが、実際の動きは、移動こそしないものの、その場でぐるぐる回り続けます。
この回る動き(=回転運動)を予測できるようにします。

 レンチやスパナを想い起こしてください。
支点(回転中心)のある物体に対し、支点から離れた場所(作用点)に、
(支点に向かう向きとは異なる)力を加えると、物体は支点の周りで回転します。
この物体を回そうとする作用を“モーメント”といいます。

支点と作用点の間の距離を単に“長さ”と呼ぶと、[モーメント]=[長さ]×[力の大きさ]という関係があり、長いほど回す作用が強くなるという、てこの原理を表しています。

オムニホイールは、3輪とも円周上(円形ボードの縁)に取り付けられているため、円形ボードの中心を支点としてロボットの回転を考えたとき、各ホイールまでの[長さ]が全て等しいので、オムニホイールロボットの[モーメント]を推し量る上では、[力の大きさ](今回はホイールの回転スピード)だけ考慮すればよいことになります。

 難しく述べましたが、簡単には、時計回りと反時計回りの回転スピードを差し引きして、ゼロなら回転せず、ゼロ以外ならその値の分だけ優勢な方向に回転する、と言えるのです。

オムニホイールロボットがカーブの軌跡を描いて移動するとき、並進運動だけで実現すれば、飛来するUFOのように向きを変えず、並進運動+回転運動を組み合わせれば、自動車のように自然に曲がることもできるのです。

3つのオムニホイールが生み出す、どんな複雑なロボットの動きも、
力の合成”で求まる並進運動と、
モーメントの合成”で求まる回転運動とに分解して説明できるのです。

 最終の3ヶ月目では、このロボットに“触覚”と“頭脳”を植え付け、
ロボカップに通ずる自律型ロボットに仕上げます。

2. 今月の課題


 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、〇は推奨、△は任意です。〇△は能力に応じます。

<ベーシックコース>
  〇 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  〇 テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  〇 上記授業内容を印刷する等して音読する
   (概ね3年生以上/低学年は補助されたり、クイズを出してあげて下さい)
  ◎ テキストp.7の設問に回答

 <ミドルコース>
  ◎ 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  〇 テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する
  ◎ テキストp.25の空間図形問題にチャレンジ
   (但し、折り紙の問題は、元の正方形に開く穴の形状を記入すること)

 <アドバンスコース>
  ◎ 2日目まで仕上げ、白地で直進、黒地で旋回するよう光センサーを繋ぐ
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <プロフェッサーコース>
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する(該当するテキストページを見ながら)

3. [東福間]6月授業スケジュール


 ・6/13 9:00~ 理科実験・中級 第1回
 ・6/13 10:30~ ロボ・ミドル   第1回
 ・6/13 13:30~ ロボ・ベーシック第1回
 ・6/13 18:30~ ロボ・アドバンス第1回

 ・6/13 15:00~ ロボ・プロ   第1回
 ・6/20 15:00~ ロボ・プロ   第2回

 ・6/27 9:00~ 理科実験・中級 第2回
 ・6/27 10:30~ ロボ・ミドル   第2回
 ・6/27 13:30~ ロボ・ベーシック第2回
 ・6/27 18:30~ ロボ・アドバンス第2回

4. [小倉北]6月授業スケジュール


 ・6/ 7 10:00~ ベーシック第1回  @企画ルーム2
 ・6/ 7 13:00~ 同上(高学年向け) @企画ルーム1

 ・6/21 10:00~ ベーシック第2回  @企画ルーム2
 ・6/21 13:00~ 同上(高学年向け) @企画ルーム2

5. 7月授業スケジュール(予告)

[東福間]
  下記が原則となります。不都合な方は、お早目にお知らせ下さい。
  ・7/11  第1回
  ・7/25  第2回

  ※プロコースは別途

 [小倉北]
  7月ムーブフェスタの影響により、下記以外に会議室が確保できませんでした。
  AMが不都合な方は、お知らせ下さい。

   ・7/ 5 10:00~ ベーシック第1回 @企画ルーム1

  ※7/19 10:00~ ベーシック第2回 @和室(初!畳の上!)
  ※7/26 10:00~ ベーシック第2回 @企画ルーム2
  ※いずれか一方に出席

  ・8/ 9 10:00~、13:00~ 第1回 @企画ルーム2
  ・8/23 10:00~、13:00~ 第2回 @企画ルーム1

  ・9/ 6 10:00~、13:00~ 第1回 @和室
  ・9/20 10:00~、13:00~ 第2回 @企画ルーム2

6. ひと言

 昨日、ムーブ会議室の予約に向かう(それだけに往復2時間掛かります…)傍ら、予約が確保できない際の代打施設として、商工貿易会館『シティプラザ』を視察しました。
 モノレール旦過駅前で便利そう(予約も楽…)ですし、旦過市場や魚町銀天街が連なって、散歩もランチも楽しかったです。
 井堀の『北九州パレス』もいいですが、こちらの方がムーブに近いですね。
万一の際は、ご協力お願い致します。

東福間・小倉北教室 佐藤