2015年6月30日火曜日

6月授業内容

1. 6月授業内容
2. 今月の課題
3. [東福間]7月授業スケジュール
4. [小倉北]7月授業スケジュール
5. 8月授業スケジュール(予告)
6. ひと言


1. 6月授業内容

<ベーシックコース『手ながモンキー』>

(初月スタートアップ講座の内容は割愛します)

 タイトル通り、手ながザルが綱を渡ります。
重い本体を吊り下げたまま長い手を動かさなくてはならないので、モーターとギアには相応の負荷(ふか)が掛かり、「ガリガリッ」と嫌な音を立てるだけで、なかなか進まない人もいました。

このガリガリ音は、ベベルギアの噛み合わせが緩いために滑っている音で、ギアの歯をどんどん削ってしまいます。モーターに削れた黄色い粉が付いていたでしょう。

反省してください。そうならないように(ピニオンギアとベベルギアを密着させるように)、テキストp.6でワッシャーを3枚使うように指示しており、先生も「青字の部品名・個数によく注意しないと失敗するよ」と警告しましたが、半数の人が写真だけを見てワッシャーを1枚しか入れなかった結果です。

何のために必要な部品かを考えていない(ワッシャーがぐらぐらでも気にしない)結果でもあります。
組み付けるすべての部品に(装飾も含めて)意味がありますので、常に追求しましょう。
そうでないと、オリジナルロボットを作れるようになりませんし、上級コースにも進めませんよ。

 さて、ギアがしっかり噛み合ったら、もう一つ大事な電池パワーさえ十分ならば、スイスイと綱渡りするモンキーが見られます。
特に、電池を6本も入れると、止めるのが大変なくらい速かったですね。

 この手の動きにも注目してください。
モーターによって回転しているのは、目玉の横のクランクまでですが、手の先は綱渡りするのに都合よく、右手で綱をたぐり寄せているときは、左手を浮かせて後ろに運び、次には反対の手で同様に進むことを交互に繰り返しています。

このような動きを変換する仕組みを“リンク機構”と呼び、上級コースで改めて研究しますが、先ずは「確かにそうなるよね」と思えるまで観察してみましょう。そうすると、2日目で手の振れ幅を大きくしてスピードアップした改造(p.19)も、感覚的に理解できるでしょう。

 なお、実際にスピードアップできるかどうかは、やはり電池パワーによります。
力学的に、「速く動かそうとするほど、力が弱くなる」宿命(てこの原理)がありますので、力の弱いモーター(電池)から欲張って速い動きを取り出そうとしても、逆に遅くなるか止まってしまうことがありましたね。
(ガリガリ音で進まないのは、別の話ですよ)

ということは? 弱い電池でも動かす方法があるってこと?
だから先生は、簡単には電池を貸さないのですよ。
弱い電池しか準備してこなかった失敗を嘆くばかりの君が、
このまとめを毎回しっかり読み、自在に改造できるようになる日を心待ちにしています。


<ミドルコース『チクタクロック』>

 振り子時計です。ロボットというより、からくり仕掛けを匂わせます。
皆さんの家には振り子時計があるでしょうか?
先生はオークションで手に入れました・・・昭和40年代のホンモノを。

 1日目は、時計の針をモーターで「ウィーン」と回しました。味気ないですね。
これに振り子を付け足して揺らしても、摩擦のせいで時間と共に減衰しますので、揺れ続けるには、振り子へのエネルギー供給が別途必要です。

通常(?)は電磁石が使われます。だから、振り子時計の裏には、モーター用の電池と電磁石用の電池が2本入るようになっていることが多いですね。
時計の針と振り子は全く相関なく、独立して動いています・・・それは、ニセモノです!

 本来、振り子時計の振り子は飾りではなく、一定の周期で振れる性質(等時性)を利用した、時のリズムを正確に刻むための肝要な仕掛けです。
電池やモーターが無い時代から動いていた時計、エネルギー源としてはゼンマイがよく使われていました。

 2日目は、時計の針を、巻き上げた重り(位置エネルギー)で回しました。
ただし、それだけでは、時計の針が目まぐるしく回り、あっという間に重りが着地しておしまいです。
時のリズムに合わせて、与えたエネルギーを少しずつ使い、少しずつ針を進める仕掛け(脱進機)が必要です。

去年の同クラスでは、脱進機の実現方法が載ったテキストページを配らず、2日目までの宿題にしてみましたが、インターネット検索などで仕組みは理解しても、独自に組み上げるのは難しかったようです。
何しろ、重り(タイヤL)が下がる微弱な位置エネルギーで、針の回転と振り子の加勢を滞りなく繰り返す、微妙なエネルギー収支バランスが必要です。テキストの設計はやはり絶妙です。

 テキスト通りに組み上げると、随所からチクタク音が聞こえてきました。
そうです、いわゆるチクタク音の正体は脱進機だったのです。
初めて電池とモーターを使わないロボット、新鮮です。

 振り子の長さで音のリズム(時計の速さ)を変えることもできます。
振り子時計の基本原理が詰まっています。

このチクタク音を長く持続させるポイントは2つ。
・振り子を長く(重さは関係ない)
・重りの位置エネルギーを高く(巻き付ける紐を長く)

このうち、振り子を長くすることで重くなると、どうしても摩擦や、
振らせるのに必要な力(慣性モーメント)を増やし、脱進機によるエネルギー供給が足りず停止しがちです。
その場合は、重りを重くするか、巻き付け半径を大きくする(*1)と有効です。
工夫すれば、60秒以上のチクタク音を奏でることができます。この音、レトロでいいですね。

*1 てこの原理により、重りを重くするのと同様に回転力が増しますが、その分速く垂れ下がります。


<アドバンスコース『教室ロボコン ~Robo Fight~』> 

 2ヶ月目の授業です。
8月のテクニカルコンテスト全国大会と競技ルールは異なるものの、そのような対戦を意識させる内容ですから、テキスト上に特段の技術的示唆はありませんが、自分たちでルールをアレンジし、
対戦してみては改造にフィードバックする楽しさを味わいました。

 対戦ルールは、
・操縦方法として手動型・自律型の別を問わない
(全員が手動操縦を選びましたが、自律型を交ぜるとより面白かったでしょう)
・左右の駆動輪とも場外に出るか、机上から落下すると負け
・5秒以上停止(通電不良・転覆・ギア外れ等)すると負け
に決まりました。

 その中で、無敗の強さを見せたロボットがありました。
強さのポイントは、
・重いこと(摩擦力・慣性力)
・片側2輪串刺しのダブルタイヤ!(摩擦力)
・重量物(電池・モーター)を駆動輪上に配したミッドシップレイアウトにより、
 タイヤの摩擦力と旋回性を向上
・頑丈な前面シールド(本体保護)

これにより、小型の対戦相手をブルドーザーのように押しのけていました。
軽くてちょろちょろと速いロボットは、逃げ回って相手が自滅するのを待つしか手立てがありませんでした。

 他に、ロボット前面にスロープ(シャベル)を付けて、相手を乗り上げさせてグリップを失わせる戦略も見られましたが、残念ながら活躍のシーンはなかったようです。

 かように、対戦が絡むと闘志が湧き上がるのが人間です。
それが分かったところで、四の五の言わず、テクニカルコンテスト用のライントレーサに挑戦してみなさい。
1回しかないチャンス、控えめな君も「もっと改良しておきたかった…」と後悔しかねないほど、楽しいものですよ!


<ロボプロコース『オムニホイールロボット(3)』>  

 オムニホイールロボットの3ヶ月目、最終月です。
 知的ロボットに必要な「感じて」「考えて」「動く」機能のうち、先月までは「考えて」「動く」だけでした。
いや、「考える」といっても、定めたプログラム通りに動くだけで、せいぜい次の動作に移行する秒数を計っているだけでした。

想像してみてください。いくら“脳ミソ”があっても、外界との接点が無ければ(目も耳も鼻も触覚さえも!)、意識は闇の中…。息が詰まりそうですね。

 1日目では、「感じる」触覚を与えます。
丸い本体の前部(頭部?)に左右のタッチセンサーを取り付け、そこから針金(触角?)を2本伸ばします。まるでテントウムシですね。
針金に何かが触れると、タッチセンサーがONになって…、どうなる?
それはプログラム次第ですね。ここが本コースの面白いところです。

左の触角に触れるとちょっと後ずさり、右の触角に触れると旋回するなど、自由に設計できます。
これだけでも、ロボット掃除機を想わせる動きになります。どうです?
あのスゴイ家電の動作も、こんな感じで実現できてしまうのですよ!
自ら判断して動いてくれるので、生物のような賢さや可愛らしさが出てきます。

 このために、新しいプログラミング要素を学びました。
“もし、○○だったら△△して、そうでなければ××する”ような判断と行動のルールを与えるもので、“if ○○ { △△ } else { ×× }”の形式で記述します。
条件分岐といって、プログラムには大切な要素です。
これがなければ、ゲームソフトも紙芝居がせいぜいです。

 最終日の2日目は、ラジコン操縦プログラムを転送して、「考える」賢さをコントローラ操縦者に委ね、スラローム走行や玉ころがし、しまいにサッカー対戦など、教室ロボカップを開催して走らせ回りました。

この過程で、プログラムの条件分岐を使用して、高速走行モードに入るボタンが決められていることを知り、さらに禁断の“スピードリミッタ解除”にまで及びましたが、机上では速すぎて落下の恐怖が付きまといましたね。

 以上、3ヶ月にわたり、オムニホイールの走行原理やプログラミングの基礎を学びました。
特に、同じボタンやタッチセンサーでも、押されてどう反応するかはプログラム次第であるという点が、これまでのロボットパーツにはない新鮮な体験だったと思います。
次回以降のテーマでも、マイコンに様々な判断と命令を担わせて、面白いマシンを製作して参りましょう。


2. 今月の課題


 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、〇は推奨、△は任意です。〇△は能力に応じます。

<ベーシックコース>(6月スタートの方を除く)
  〇 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  △ テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  〇上記授業内容を印刷する等して音読する
   (概ね3年生以上/低学年は補助 or クイズ出題形式で)
  ◎ テキストp.14の空間図形問題にチャレンジ(1日目)
  ◎ テキストp.16~20の設問に回答

 <ミドルコース>
  ◎ 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  △ テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する
  ◎ テキストp.12の空間図形問題にチャレンジ(1日目)
  ◎ 60秒以上チクタク音が続くよう調整・改造

 <アドバンスコース>
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する
  〇 テクニカルコンテスト用ロボット(ライントレーサ)を製作し、
   高速追従性やゴール時の旗揚げ方法を考案する

 <プロフェッサーコース>
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する(該当するテキストページを見ながら)

3. [東福間]7月授業スケジュール

 ・7/11  9:00~ 理科実験・中級 第1回
 ・7/11 10:30~ ロボ・ミドル  第1回
 ・7/11 13:30~ ロボ・ベーシック第1回
 ・7/11 15:30~ ロボ・プロ   第1回
 ・7/11 18:30~ ロボ・アドバンス第1回

 ・7/25  9:00~ 理科実験・中級 第2回
 ・7/25 10:30~ ロボ・ミドル  第2回
 ・7/25 13:30~ ロボ・ベーシック第2回
 ・7/25 15:30~ ロボ・プロ   第2回
 ・7/25 18:30~ ロボ・アドバンス第2回

4. [小倉北]7月授業スケジュール

 ムーブフェスタの影響により、特別に下記の通りです。午後の部はありません。

  ・7/ 5 10:00~ ベーシック第1回 @企画ルーム1

 ※7/19 10:00~ ベーシック第2回 @和室(初!畳の上!)
 ※7/26 10:00~ ベーシック第2回 @企画ルーム2

 ※いずれか一方に出席下さい。
 ※両日ともOKな方は、3年生以上は7/19、2年生以下は7/26にお願いします。

5. 8月授業スケジュール(予告)

 下記が原則となります。不都合な方は、お早目にお知らせ下さい。
 [東福間]
  ・8/ 8  第1回
  ・8/22  第2回

  ※プロコースは別途

 [小倉北]
  ・8/ 9 10:00~、13:00~ 第1回 @企画ルーム2
  ・8/23 10:00~、13:00~ 第2回 @企画ルーム1

  ・9/ 6 10:00~、13:00~ 第1回 @和室
  ・9/20 10:00~、13:00~ 第2回 @企画ルーム2

  ・10/ 4 10:00~ ベーシック第1回 @和室
  ・10/18 10:00~ ベーシック第2回 @和室

  ・10/ 4 13:00~ ミドル開講 第1回 @企画ルーム2
  ・10/18 13:00~ ミドル開講 第2回 @企画ルーム2

6.  ひと言

 ベーシック・ミドルコースのアイデアコンテスト全国大会について、案内チラシを渡し忘れた方(6/21AMムーブ出席)には申し訳ありませんでしたが、次の授業で配ります。
オリジナルロボットを考案し、7/22(水)九州本部必着にて、所定の応募用紙・プレゼン動画(3分以内)を提出します。
 ベーシック・ミドル部門別で選抜しますので、ほぼ1回限りのチャンス!
有志は果敢に挑戦して下さい。
 アドバンスコースは、ライントレーサ(黒ライン追従車)によるスピードコンテストです。
九州地区予選が近隣の福岡市で開催されるという地の利を活かさない手はありません!
原則として、全員参加して下さい。(別報でご案内します)

 8/22(土)に東京大学で開催の第5回ロボット教室全国大会は、生徒さん・ご家族に限り、下記HP上で観覧申込みもできます。ご参照下さい。

http://kids.athuman.com/robo/event/convention2015/?code=/

詳細はご遠慮なくお問合せ下さい。

東福間・小倉北教室 佐藤

2015年5月31日日曜日

5月授業内容

1. 5月授業内容
2. 今月の課題
3. [東福間]6月授業スケジュール
4. [小倉北]6月授業スケジュール
5. 7月授業スケジュール(予告)
6. ひと言

1. 5月授業内容

<ベーシックコース『コマ回し君』>

(初月スタートアップ講座の内容は割愛します)
 ロボットというより玩具と呼べそうな、コマ回しマシーンです。
タッチセンサーを押してコマを加速させている間は、コマが本体に留まり、加速を止めた途端、回転の勢いで自動的にコマ自身を床上に押し出すという優れものです。いつものキットで、アイデア次第ではこんなのも作れるという新鮮な驚きを感じさせます。

 さて、コマ回しを成立させるメカニズムは、マシーンとコマの双方にあります。

 マシーン側に必要なのは、できる限り高速にコマを回転させることです。
本体上部に取り付けたギヤLが、どえらい速さで回りますね。
どれくらい速いのでしょうか? モーターの回転と同じでしょうか?
だったら、モーターにシャフトを一本つき刺して、ギアLを付ければ済む話です。

 実際は、ギアの噛み合わせを工夫して、回転スピードを上げています。
これを増速(ぞうそく)といいます。
マシーン内部か、テキストp.7の写真を見てください。

モーターギヤMピニオンギヤギヤM ピニオンギヤギヤL
の順に回転を伝えていますね。
ここで、“=”は、同一のシャフトに通して一緒に回転しているため、回転スピードが変わらないことを表しています。これを同軸(どうじく)といいます。
一方、“⇒”は「大きいギヤが小さいギヤを回している」箇所であり、ここで回転スピードが上がるのです。

 どれくらい上がるかは、ギヤの歯数の比で決まります。歯数を(数字)で表すと、
本体内部で、ギヤM(24) ⇒ ピニオンギヤ(8)の伝達が2段と、
本体上部で、ギヤL(40) ⇒ コマのギヤM(24)の最終段とで、
24/8×24/8×40/24=3×3×5/3=15倍の増速作用があります。

ギヤの組み替え次第で、計算上はこれ以上の増速比を出せますが、今回の15倍速でも、モーターの回転速度は無負荷(空回り)時より大分遅くなり、「重くしたコマの加速にも少し時間がかかる」くらいマシーンの限界能力に近いですから、これ以上欲張っても大差ない(*1)かもしれません。
全エネルギーをコマの回転運動に使い尽くすという意味では、とてもピュアなマシーンです。

 コマ側に必要なのは、いかに安定して回転が長時間続く形にするかという点です。
ロボットキットの中から、軸としてシャフト、回転体として円形部品(*2)を選択するという制約下では、
1) コマを重く(なるべく外周部を重くして慣性モーメントを大きく)、
2) 重い部品は回転中に地面に接触しない程度に下の方へ(重心を低く)、
という2点をポイントとしておきますが、過去には、
重心を高く作ったことで不利なふらつき(歳差運動)を、下部に履かせたホイールの縁と地面との低摩擦な接触で抑制し、好記録を出した工夫例も見られました。

 さて、2日目の最後に、各自のコマ回し時間を競いました。
地面の材質(ザラザラの机か、ツルツルの鉄板か)にも左右されますが、上記2点を押さえたコマなら、30秒以上回り続けることができました。
各自が試行錯誤する中で、50秒を超え、1分を超え、ついに100秒を超えるものまで登場しました。

 逆に、弱かった電池をさらに消耗して、最後には加速できなくなるという苦杯をなめた人もいましたね。

 市販品のコマとは違って、自ら色々とバランスを変えて試せる点においては、遊びながら考えさせる優れた教材になったと思います。
ご家庭でも是非一緒になって探求したいテーマですし、そのような大人と一緒に考える時間を通して、一段と物理に目覚めていくものと思います。

 学術的にも、コマの原理は、何年も勉強し続ける人もいるくらいとても奥深いもの。
高校物理を学んで、また改めて興味を持ってもらえたらいいですね。

*1 小倉北教室において、先生は、コマ上端のギヤM(24)をピニオンギヤ(8)に替えて、さらに3倍(トータル45倍!)の増速比を稼いで、100秒超えの記録保持者にも圧勝しました。
ジェットエンジンの始動のように、加速完了まで10秒くらいかけて音程が高まるようなカッコイイものですが、白状すると、これは東福間教室に出席した5年生のアイデアを盗用したものです。

*2 必ずしもタイヤ・ギヤのような円形部品を使う必要はなく、回転軸(シャフト)に対して対称となるような配置(点対称)なら、他の部品でも使えます。
例えば、タイヤLのホイール穴にペグを4本挿して重くした工夫例がありました。


<ミドルコース『つなわたり君』>

 ピンと張った紐を伝うロボットですが、1日目はロープウェイ、2日目は一輪車でサーカスの綱渡りをするようなロボットと、形態を大きく変えます。
ここまで作り変えるテーマは、当教室が始まって以来、初めてです。面白いですね!

 学習ポイントは“重心”です。ロープウェイ型ロボットは、ローラーだけ紐の上に掛けて、重い本体を吊り下げていますから、重心は、見た目通り、本体の中心部にあって、支点(紐と接するローラーの最下点)より下に位置します。

重心に集中して重力が掛かると考えてよいため、支点は真下に引っ張られるものの、
紐に引っ掛けられているので、安定して支えられます。
ゴンドラが風に煽られて、重心が支点の真下からずれても、しばらく揺れるだけで、また元の安定した姿勢に収まります。

 ここで、このゴンドラを逆立ちさせるように、ローラーの上端を紐の上に置こうとしたら、どうなるでしょうか?
支点(紐との接点)より上にきた重心が重力で引っ張られる結果、横にコロッと半回転しながら落下してしまいます。
サーカスの綱渡りもこの状態であり、本来は非常に不安定なところ、横に伸ばした両腕や長い棒を傾けつつ、上手にバランスを取っています。
このロボットに、そこまで期待できませんね。

 ところが、2日目のロボット『つなわたり君』は、これを見事にやってのけます。
一輪車に乗った彼の重い胴体は、支点よりかなり高い位置にあって、逆立ちしたゴンドラ同様に不安定そうですが、なかなかどうして、バランスの取れたロボットなら、多少のロープの揺れもお構いなく、スイスイと渡ってしまいます。何故でしょうか?

変わったところと言えば、ハの字形をした長い棒を持っていることです。
それがどうして? 綱渡りサーカスの長い棒と同じじゃない?
いえいえ、ハの字形に垂れ下がった棒の両端に、重い電池ボックスやタイヤを取り付けているところがミソなのです。

これにより、ロボットの重心を支点より下に引き下げることができます。
紐の真下には部品が何もないのに? それでも構いません。
計算上、このロボットの重心は、紐の下の空中に位置することになり、これにより、彼をゴンドラ同様に安定させているのです。


 やじろべえを知っていますか? 同じ原理です。
両端の重りや棒の長さを調整してバランスを取ることが重要ですが、それだけではありません。

左右のバランスだけ気にすればよいシーソーなら、重さの代わりに、支点からの長さ(座る位置)を調整してもよいのですが、やじろべえは、さらに、重心が支点の下にあることが必要です。

ですから、あまり棒を短くすると、重心がどんどん上がって、支点に近づくほど不安定になってしまいますので、要注意です。







<アドバンスコース『教室ロボコン ~Robo Fight~』>

 1ヶ月目の授業です。
8月の全国ロボットコンテストを意識させるタイトルと内容になっています。
このため、製作の難易度を抑えて、“戦う”ためのルール設計や改造に時間を存分に使えるよう意図されています。

 1日目は、2個のモーターが左右両輪を独立駆動する車両を、戦車型リモコンで手動操縦し、直径60cmの土俵上で相撲対決させます。
操縦テクニックや電池パワーの他に、重さ(≒摩擦力)も大事な勝因のようでした。

 2日目は、これを光センサーを利用した自動操縦ロボットに改造します。
土俵の円は、5cm幅の黒い線で描かれています。
土俵内(白い紙)では直進(両輪を回転)し、黒い枠線を感知すると旋回(片輪のみ回転)する設計が好ましいでしょう。
逆の設計だと、土俵内でぐるぐる回り続けるだけのロボットになりました。
(それでも、相手を弾き飛ばせば勝ちなのですが)

 光センサーが反応しない失敗例が3点ありました。

1) 黒い線の印刷が薄くて光センサーの反応が鈍かったため、 黒テープやマジックで描き足しました。(先生の失敗)

2) 光センサーの応答時間に余裕をもたせるため、走行スピードを落とそうと電池を3本まで減らしたところ、電圧が低くなり過ぎて、光センサーが全く機能しなくなりました。

3) 前記の他に反応しない場合がありましたが、モーター用の逆転スイッチ(リモコンスイッチを含む)を経由させた光センサーに、+/-が逆の入力電圧が掛かっていました。

 モーターや豆電球と異なり、センサーやダイオード(LED)類には極性があります。
 原則として、これらの極性素子は電源スイッチ(イエロー)のジャックに挿し、逆転スイッチ類はその後につなぐのが好ましいですが、止むを得ない場合は、なるべくセンサー類を傷めないよう極性に注意して操作しましょう。

 2ヶ月目に、攻撃型ロボットの要素を加え、“教室ロボコン”のルールを設計して、リーグ対戦もしくはトーナメント決戦を開催します。

 

<ロボプロコース『オムニホイールロボット(2)』>

 1ヶ月目に製作したオムニホイール(Omnidirectional Wheel;全方向車輪)ロボットの動きの原理を理解し、思い通りの動きをプログラム上で指示できるようになるまでの2ヶ月目の授業です。

 1日目は、改めてオムニホイール(車輪)の仕組みを考察し、3つの車輪を任意の速さ・向きに回したときの進行方向が“力(ベクトル)の合成”によって求まることを学びました。

 ここでのベクトルは、車輪の回転の向きと速さを、それぞれ矢印の向きと長さで(紙面上に)表したものです。

2つのベクトルの合成は、まず作用点(ベクトルの根元)を重ねて、それが平行四辺形(菱形)の2辺を形成するようにもう2辺を描き足し、作用点から発した対角線(=合力)の向きと長さで表します。

3つのベクトルを合成するには、任意の2つを合成した後、その合力と残りのベクトルをさらに合成します。

様々な練習問題を製図して解きつつ、プログラムの数値に反映して動きを確かめ、どんな3輪の回転の組合せでも、ロボットの進行方向を求めることができるようになりました。

 2日目に、ロボットの回転する動きを考察します。
1日目では、進行方向を割り出すことができましたが、ロボットが向きを変えずに移動(=並進運動)する場合は、これで十分でした。

しかし、実際は互いに離れた3輪による作用点(ベクトルの根元)を一点(例えば、ロボットの中心)に集めて合成するために、本体が回転しようとする力(モーメント)を扱うことができませんでした。

例えば、3輪とも同じ速さで時計回りに回転させる場合、ベクトルの合成結果は長さゼロの“点”となって、ロボットが移動しないことを言い当てますが、実際の動きは、移動こそしないものの、その場でぐるぐる回り続けます。
この回る動き(=回転運動)を予測できるようにします。

 レンチやスパナを想い起こしてください。
支点(回転中心)のある物体に対し、支点から離れた場所(作用点)に、
(支点に向かう向きとは異なる)力を加えると、物体は支点の周りで回転します。
この物体を回そうとする作用を“モーメント”といいます。

支点と作用点の間の距離を単に“長さ”と呼ぶと、[モーメント]=[長さ]×[力の大きさ]という関係があり、長いほど回す作用が強くなるという、てこの原理を表しています。

オムニホイールは、3輪とも円周上(円形ボードの縁)に取り付けられているため、円形ボードの中心を支点としてロボットの回転を考えたとき、各ホイールまでの[長さ]が全て等しいので、オムニホイールロボットの[モーメント]を推し量る上では、[力の大きさ](今回はホイールの回転スピード)だけ考慮すればよいことになります。

 難しく述べましたが、簡単には、時計回りと反時計回りの回転スピードを差し引きして、ゼロなら回転せず、ゼロ以外ならその値の分だけ優勢な方向に回転する、と言えるのです。

オムニホイールロボットがカーブの軌跡を描いて移動するとき、並進運動だけで実現すれば、飛来するUFOのように向きを変えず、並進運動+回転運動を組み合わせれば、自動車のように自然に曲がることもできるのです。

3つのオムニホイールが生み出す、どんな複雑なロボットの動きも、
力の合成”で求まる並進運動と、
モーメントの合成”で求まる回転運動とに分解して説明できるのです。

 最終の3ヶ月目では、このロボットに“触覚”と“頭脳”を植え付け、
ロボカップに通ずる自律型ロボットに仕上げます。

2. 今月の課題


 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、〇は推奨、△は任意です。〇△は能力に応じます。

<ベーシックコース>
  〇 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  〇 テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  〇 上記授業内容を印刷する等して音読する
   (概ね3年生以上/低学年は補助されたり、クイズを出してあげて下さい)
  ◎ テキストp.7の設問に回答

 <ミドルコース>
  ◎ 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  〇 テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する
  ◎ テキストp.25の空間図形問題にチャレンジ
   (但し、折り紙の問題は、元の正方形に開く穴の形状を記入すること)

 <アドバンスコース>
  ◎ 2日目まで仕上げ、白地で直進、黒地で旋回するよう光センサーを繋ぐ
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <プロフェッサーコース>
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する(該当するテキストページを見ながら)

3. [東福間]6月授業スケジュール


 ・6/13 9:00~ 理科実験・中級 第1回
 ・6/13 10:30~ ロボ・ミドル   第1回
 ・6/13 13:30~ ロボ・ベーシック第1回
 ・6/13 18:30~ ロボ・アドバンス第1回

 ・6/13 15:00~ ロボ・プロ   第1回
 ・6/20 15:00~ ロボ・プロ   第2回

 ・6/27 9:00~ 理科実験・中級 第2回
 ・6/27 10:30~ ロボ・ミドル   第2回
 ・6/27 13:30~ ロボ・ベーシック第2回
 ・6/27 18:30~ ロボ・アドバンス第2回

4. [小倉北]6月授業スケジュール


 ・6/ 7 10:00~ ベーシック第1回  @企画ルーム2
 ・6/ 7 13:00~ 同上(高学年向け) @企画ルーム1

 ・6/21 10:00~ ベーシック第2回  @企画ルーム2
 ・6/21 13:00~ 同上(高学年向け) @企画ルーム2

5. 7月授業スケジュール(予告)

[東福間]
  下記が原則となります。不都合な方は、お早目にお知らせ下さい。
  ・7/11  第1回
  ・7/25  第2回

  ※プロコースは別途

 [小倉北]
  7月ムーブフェスタの影響により、下記以外に会議室が確保できませんでした。
  AMが不都合な方は、お知らせ下さい。

   ・7/ 5 10:00~ ベーシック第1回 @企画ルーム1

  ※7/19 10:00~ ベーシック第2回 @和室(初!畳の上!)
  ※7/26 10:00~ ベーシック第2回 @企画ルーム2
  ※いずれか一方に出席

  ・8/ 9 10:00~、13:00~ 第1回 @企画ルーム2
  ・8/23 10:00~、13:00~ 第2回 @企画ルーム1

  ・9/ 6 10:00~、13:00~ 第1回 @和室
  ・9/20 10:00~、13:00~ 第2回 @企画ルーム2

6. ひと言

 昨日、ムーブ会議室の予約に向かう(それだけに往復2時間掛かります…)傍ら、予約が確保できない際の代打施設として、商工貿易会館『シティプラザ』を視察しました。
 モノレール旦過駅前で便利そう(予約も楽…)ですし、旦過市場や魚町銀天街が連なって、散歩もランチも楽しかったです。
 井堀の『北九州パレス』もいいですが、こちらの方がムーブに近いですね。
万一の際は、ご協力お願い致します。

東福間・小倉北教室 佐藤

2015年4月30日木曜日

4月授業内容

1. 4月授業内容
2. 今月の課題
3. [東福間]5月授業スケジュール
4. [小倉北]5月授業スケジュール
5.  ひと言

1. 4月授業内容


<ベーシックコース『ぐるぐる進む君』>

(初月スタートアップ講座の内容は割愛します)
 二足歩行ロボットです。左右の足が交互に前後するのだから、歩くのは当たり前?

よく考えてみます。人間やアシモのように、片足を上げながら歩くほど高度ではありませんから、
地面についたまま前後に往復する足に前も後ろもなく、その場で摺り足をするだけでうまく進みません。
本来、1日目のロボットがこの形態であり、ここまでで2日目を終わった人もいましたが、あまりスマートな歩みではなかったでしょう。
しかし、人間は、ぶかぶかのスリッパを履いたときでも、摺り足をしながら前に進むことができます。
同じ摺り足の動きで後退することもできます。無意識に何かを切り替えています。
そうです、重心ですね。2日目で、ちょうちんアンコウの如く頭から生えた角(?)がその重心移動メカニズムです。

もちろん、付ければいいってものではありません。
角の先に付けたタイヤ(カウンターウェイト=重り)に揺り回されるわけですから、足の動きとの同調(位相)を考えないと、逆にバランスを崩してすぐに転んでしまいます。
しかし、この位相は30°単位で調整できますから、後ろに下がる方の足に重心を傾け、前へ出る方の足を浮かせ気味にすれば、見違えるようにスタスタと歩くことができるように変身しますよ!

もっともっと速く歩かせるために、電圧アップ(電池4→6本)したり、脚を長くして歩幅を大きく取ったりしてみましょう。
すると、安定感がなくなり、上体がヨタヨタに振れるところを、カウンターウェイト(重いほど、角を長くするほど効く)で相殺。
さらに、足裏を広げて転びにくくします。
二足歩行ロボットというのは、なかなか奥深いテーマなのですよ。

 


<ミドルコース『シャクロボ』>

 見た目は3輪バイクのようですが、尺取り虫(シャクトリムシ)をモチーフにしたロボットです。
1日目では、前輪の付いたロッドを前後に往復させています。
この動きは、クランクというリンク機構を用いて、モーターの回転運動を往復運動に換えて実現しています。
しかし、ロッドの往復に合わせて、前輪は前後に転がるだけであり、推進力とはなりません。
ところが、ただ1点の部品(ペグS)を装着するだけで、見違えるように前進するように変わります。
ラチェットという機構で、一方向への回転のみを許し、反対方向へは回らない仕掛けです。

皆さんの身近なところでは、自転車のペダル(正確にはチェーンで駆動される後輪のハブ内)に使われており、前方向にはしっかり噛み合って回転を伝えますが、逆方向にはチッチッチと音を立てて空回りする仕組みにより、ペダルを休めても車輪は回り続けることができます。

このラチェット機構を実現するために、前輪に重ねたギアMの歯にペグSの角を当てました。
すると、ロッドの往復に合わせて、前輪と後輪が交互に前へ転がることを繰り返し、本体が前進するようになりました。
まるで、尺取り虫が胴体を曲げたり伸ばしたりして進む様子です。
後輪が前へ転がるのは、ロッドが後ろへ戻る際に前輪が逆回転しないようロックされ、本体(と一体化した後輪)が前輪に引っ張られるようになったためです。
前輪が前へ転がる際は、本体(および後輪)は止まったままか、むしろ反動で少し後退します。

2日目に、後輪にも同様に往復するロッドとラチェットを組み付けました。
これで、後輪の後退も防げるようになり、推進効率が上がりそうです。
前輪と後輪のロッドが往復するタイミング(のズレ)は自由に変更できますが、
一番スムーズに前進するタイミングはどのようなものでしたか?
力学的には、やはり、ロボットを横から見て、
前後のロッドがハの字形に開いたり閉じたりするようなタイミングが良いでしょう。
より尺取り虫っぽく見えますね!

 


<アドバンスコース『ステップチャレンジャー』>

 2ヶ月目の授業です。
2日目に製作した、4輪駆動の台車の“上”のエレベーターに4本脚を取り付け、
一旦上昇させたエレベーターを下降させることで4脚を直立させ、台車を浮き上がらせるアイデアです。

4本脚で立ったロボットは、
1) 安定した姿勢で立ち、特に、横や後方へ倒れないこと
2) 前脚を後方へ蹴り、前方へ倒れる初動(動作の契機)を遠隔操作で与えること
3) 4脚が前方へ倒れることで、台車を前方の段差の上面へ水平に落とし込むこと
が実現されています。

各機構がどのように実装されているかについては十分承知のことと思いますが、
それぞれが高度で、特に重要な意味をもつ仕組みと考えるのではなく、
ただの4輪車では乗り越えられない段差を克服するためのロボットとして、
アイデアを寄せ集めた一例に過ぎないと捉えてください。

どんな複雑な機械も、論理も、プログラムも、1つ1つは単純な構成要素を組み合わせて成立しています。
但し、目的の機能を達成するために、個々の要素アイデアに分解して統合し、実現するプロセスこそが高度なのであり、人間の尊い知的営みなのですから、毎回、何か一つでもオリジナルアイデアで代替し、改良し、同等以上の機能を実現してみましょう。
それらの試行が集積して君の本当の力となりますから、難しくても、遅れても、先ずはテキストに紹介された機能を再現してみましょう。
ロボット教室なのですから、苦しくは、ないでしょ?

 


<ロボプロコース『オムニホイールロボット(1)』>

 オムニホイール(Omnidirectional Wheel;全方向車輪)ロボットを製作し、リモコン操縦するまでの1ヶ月目の授業です。
1日目は製作です。
2層の円形ボードにモーター、オムニホイール、マイコンボード、無線モジュール、電池ボックスを組み付け、配線コネクタを差し込んでいきます。
殆どの作業がネジ留めですが、組み付ける順番の解決と、手先の器用さが要求されます。
日常において、めったに経験できない作業なので、悩みながらもパズルのようで楽しかったのではないでしょうか。
パソコンからサンプルプログラムを転送し、3つのホイールを指示通りの速さ・向きに回せることを確認して終了しました。

2日目に、ゲームパッド(プレステ用と同等!)と無線通信リンクを確立し、パソコンからラジコンプログラムを転送すると、アナログスティック(*1)を倒した分だけの速さで前後左右に移動したり、その場でぐるぐる旋回したりすることを確認しました。
また、調整用プログラムを転送してロボットの動きを観察し、個体差(重心やホイールの摩擦力の違い)による進行方向のズレを補正するための調整値(*2)を割り出しましたが、これは今回の学習テーマの本質ではありませんので、あまり気にしなくて良いです。
どのスティックをどれだけ倒したか、どのボタンを押したかにより、ロボット(3つのモーター)をどの向き(電流の+-)にどれくらいの速さ(電圧)で動かすかは、全てプログラム(あなた)が決めることです。

マイコンは、得意な計算・判断だけを、あなたに代わってあなたが決めたルール通りに素早く実行し、各部品に必要な命令(数値による指示)を間違いなく出してくれる便利な道具と考えてください。
オムニホイールの特徴は、黒い樽型ローラーの作用により、普通のタイヤとしての進行方向(回転方向)とは垂直の横方向(ホイールの回転軸方向)にズルズルっと滑ることです。

このホイールが120°間隔で3つ装着されることにより自由自在に移動・旋回できそうなことは分かりましたが、これを力学的・数学的にどのように捉え、プログラム上の数値にどのように反映すべきかについては、次回で学びます。

*1 アナログ(連続量)はデジタル(離散量)の対義語ですが、アナログスティックは、倒した向き・強さを -128 ~ 127 など、マイコンが扱いやすい整数(とびとびの値=離散量)に変換しているため、厳密にはデジタル式なのですが、ON/OFF判定だけの○×△□ボタンと違って、最小値~最大値を十分細かく刻んで表しているため、人間には滑らかな連続量で制御しているように感じられます。
*2 調整値“0.9f”などは、数学でいう実数(連続量)に相当し、細かな小数を計算するための拡張された表現方法ですが、これもマイコン内部で扱う以上、厳密にはデジタル値(離散量)です。


2. 今月の課題

 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、〇は推奨、△は任意です。〇△は能力に応じ、個別に指示しています。

<ベーシックコース>
  ◎ テキストp.14の空間図形問題にチャレンジ(1日目)
  〇 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  〇 テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <ミドルコース>
  ◎ 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  〇テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <アドバンスコース>
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <ロボプロコース>
  ◎ テキストp.16以降を読み、サンプルプログラムRemote1の概要を理解する
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する


3. [東福間]5月授業スケジュール

 ・5/ 9  9:00~ 理科実験・初級 第1回
 ・5/ 9 10:30~ ロボ・ミドル  第1回
 ・5/ 9 13:30~ ロボ・ベーシック第1回
 ・5/ 9 18:30~ ロボ・アドバンス第1回

 ・5/ 9 15:30~ ロボ・プロ   第1回
 ・5/17 10:00~ ロボ・プロ   第2回

 ・5/30  9:00~ 理科実験・初級 第2回
 ・5/30 10:30~ ロボ・ミドル  第2回
 ・5/30 13:30~ ロボ・ベーシック第2回
 ・5/30 18:30~ ロボ・アドバンス第2回

4. [小倉北]5月授業スケジュール

 ・5/10 10:00~ ロボ・ベーシック第1回

 ※5/24 10:00~ ロボ・ベーシック第2回
 ※5/31 10:00~ ロボ・ベーシック第2回

 ※いずれか一方に出席

5.  ひと言

 GWは如何お過ごしでしたか? 宗像市在住で、実家が大分県別府市の佐藤は、いつも通り、行橋~宇佐を経由した一般道メインで帰省したのですが、道中やたらと「東九州自動車道」の案内標識が目立ちます。
GoogleマップやAppleマップにも載っていませんし、開通はまだ先のことと思っていたのですが、ほんの一部区間を除いて北九州~大分が3月にほぼ開通していることを初めて知りました。
いち早く掲載したYahoo!マップをナビ代わりに、帰りは本当に快適でした。

東福間教室 佐藤

2015年3月31日火曜日

3月授業内容

1. 3月授業内容<ベーシックコース>
2. 3月授業内容<アドバンスコース>
3. 今月の課題
4. [東福間]4月授業スケジュール
5. [小倉北]4月授業スケジュール
6. 5月授業スケジュール(保留)
7. その他

1. 3月授業内容<ベーシックコース『ジャイアントホッパー』>

 バッタ型ロボットです。ギアを介してモーターが駆動するのは、本体の側面で時計の針のように回転するロッド3アナだけです。それだけなのに、後ろ脚を折り曲げたり、伸ばしたりを繰り返し、尺取り虫のように前進します。どうしてでしょうか?

 ロッド3アナが1回転毎に後ろ脚を跳ね上げています。このような回転軸を利用した周期的な運動機構をカムと呼び、例えば、自動車のエンジンが呼吸(吸気と排気)を切り替えるために使われています。後ろ脚が跳ね上がる時に関節が折れ曲がって、後ろのタイヤLを前方へ引きずります。この時、本体は進みませんが、次に輪ゴムの力で脚が伸びる時、後ろのタイヤLは微動だにせず、
前輪のタイヤSが転がりながら本体を前へ進めます。

 後ろのタイヤLは回転しないのに、どうして前進するよう都合良く引きずられたり踏み止まったりしてくれるのでしょうか?
タイヤLは回転しないのですよ。だったら、タイヤLは動かず、後ろ脚の屈伸運動に合わせて本体(前輪)が前後に往復するだけではないでしょうか?
(尺取り虫も、次の一歩を迷ってそのような動きをすることがありますね)

 それは摩擦力(滑らないぞ!という力)の効き方が違うからです。
ちょっと難しいのですが、脚を折り曲げる(引っ込める)時はタイヤLを斜め前方上向きに引き上げる力が働き、重い本体を後退させるほどの地面との摩擦力はなくなる結果、タイヤLの方が引きずられますが、脚を伸ばす時は斜め後方下向きに蹴り出すので、地面との摩擦力が強力に働き、推進力になるのです。

 消しゴムをノートに軽く当てた場合と強く押し付けた場合とでは、滑らせるのに必要な力が全然違いますよね? それと同じです。
タイヤLも跳ね上がるほどのパワーがあれば分かり易いのですが、ずっと地面を引きずっていますので、見た目では分かりません。タイヤLを消しゴムだと思ってください。

 最後の競技は6人(体験生1人)で“バッタレース”をしました。
スピード勝負です。推進はゴムの弾性力、そのゴムにエネルギーを充填するのがモーターの仕事と言えますから、ゴムはきつく、モーターはパワフルに、というのが理想です。本来は、有限なモーターパワーをロッド3アナの回転トルク(脚の力)に振るか回転数(脚のスピード)に振るかでギア比を決めたり、それに適した輪ゴムの掛け方や本数を探ったりするのが戦略ですが、結局は、新し目の電池を6本フルに充填した普通のロボット構成が強かったですね。やはり電池パワー、ものを言います。


2. 3月授業内容<アドバンスコース『ステップチャレンジャー』>

 1ヶ月目の授業です。高い段差を乗り越えられる究極の4輪車を目指します。

 1日目は台車となる4輪車を製作し、前輪駆動(現在の自動車の主流)と4輪駆動(オフロード車、雪国で主流)とで乗り越えられる本の高さを比較しました。当然、前輪が浮いても後輪で後押しできる4輪駆動車の方が能力が高かったですが、さほど大きな違いが見られなかったのは何故でしょうか。

スポーツカーばりに車体底面の地上高(ロードクリアランス)が低すぎて、段差の角に当たり易いからです。雪道はまあまあイケますが、凸凹道はムリですね。ジープの車高が高いのはこのためです。
(そういえば先生は昔、軍用ジープを乗り回す怪しい大学生でした)

 2日目は、台車の“上”にエレベーターを製作しました。アドバンスコースで増えたラックギア6個を並べた2本のギザギザレールがいい感じですね。
それにしても、このエレベーターは何を持ち上げるのでしょうか?
台車は高い段差を乗り越えられるようになるのでしょうか?
2ヶ月目のお楽しみです。


3. 今月の課題

 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、〇は推奨、△は任意です。〇△は能力に応じます。

 <ベーシックコース>
  ◎ テキストp.16の空間図形問題にチャレンジ(1日目)
  ◎ 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  〇 テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <アドバンスコース>
  ◎ 2日目のエレベーター部分まで完成させる
  △ 上記授業内容を印刷する等して音読する


4. [東福間]4月授業スケジュール


 ・4/ 4 10:00~ ロボ・プロ スタートアップ

 ・4/11  9:00~ 理科実験・初級 第1回
 4/11 10:30~ ロボ・ミドル  第1回
 4/11 13:30~ ロボ・ベーシック第1回
 ・4/11 18:30~ ロボ・アドバンス第1回

 ・4/12 10:00~ ロボ・プロ   第1回

 4/25 14:00~ ロボ・ベーシック第2回
 4/25 15:45~ ロボ・ミドル  第2回
 4/25 17:30~ 理科実験・初級 第2回
 4/25 19:00~ ロボ・アドバンス第2回

 ・4/26 10:00~ ロボ・プロ   第2回

 進級と時間帯にご注意!


5. [小倉北]4月授業スケジュール

 事前ご連絡の上、振替授業に利用下さい。

 ・4/ 5 10:00~ ロボ・ベーシック第1回
 ・4/19 10:00~ ロボ・ベーシック第2回


6. 5月授業スケジュール(保留)

 学校の年間行事予定表(運動会の日)を入手次第ご提出いただき、
決定させてください。


7.  その他

 お花見されましたか? 先週土曜日の宮地嶽神社はまだ三分咲きでしたが、
今週は天候が悪く、4/2(木)が最後の日和でしたね。
 小倉北教室3月開講に続き、ロボ・プロコースを4月開講します。
ロボット教室とはまた別の、新鮮なカリキュラムで、
指導する方としても非常にワクワクしております。
 アドバンス修了生向けの説明会は別途ご案内しますが、
見学ご希望の方はお知らせください。


東福間教室 佐藤

2015年2月28日土曜日

2月授業内容

1. 2月授業内容<ベーシックコース>
2. 2月授業内容<アドバンスコース>
3. 今月の課題
4.その他

1. 2月授業内容<ベーシックコース『クルリン』>


 でんぐり返りロボットです。モーターで回す長い腕が地面を突くから
でんぐり返るんです。単純ですし見ていて当たり前、何が面白いんだ!?
と言うとそれで終わります。しかし、座って静止させた状態から
このロボットの動きを予測するのは難しく、先生も最初は分かりませんでした。

 事実、腕を後ろ向きに回すと前転し、前向きに回すと後転するという、予想外な動きを見せます。
実際は、前転はできますが、(人に似せて)前方向にしか曲がらない脚(もも)のせいで後転はできません。
後転時は重力などで脚がまっすぐなままになり、腕の回転半径をはみ出るのででんぐり返るまでは至らず、ちょうど脚をピンと伸ばした腕立て伏せかバタフライのような状態に陥ります。

 長い腕の先を地面に突かせて重い本体を起こすには、
回転軸に強大な力(トルク)が必要です。
もうお馴染みの1/9減速ギア機構がモーターのトルクを9倍に上げていますが、
腕が長い分、何かの拍子に本体や持ち手に引っ掛かると(イタタタ…)、
てこの原理で強大な逆向きの力が回転軸を止めようとし、
ギヤに負担が掛かってガリガリ音とともに噛合せが外れ、
修理することもしばしば。

 また、でんぐり返り時の衝撃が激しいので、頭蓋骨が割れないよう
ロッドとペグでつなぎ留めたり(フランケンシュタイン?)、
包帯(輪ゴム)を巻いて緩衝策を立てたりしておくことも
耐久性を左右する秘策でした。

 それにしても、今回のロボットは元気いっぱいというか、
バッタンバッタンと動きが激しく、音も騒がしいロボットでした。
顔面が外れちゃうね!


2. 2月授業内容<アドバンスコース『バグモジョラ』>



 2ヶ月目の授業です。3日目は、戦車型リモコン(手動操縦)に代わり、
光センサー(自動操縦)を実装しました。
これで黒いラインを自動的に辿ることができるようになりました。
このようなロボットを“自律型ロボット”といいます。
「自分で律する(コントロールする)」という意味です。
「自立(自分の稼ぎで生計を立てる)」ではありませんよ。

 一口に黒いラインを辿るといっても、どのようなメカニズムでしょうか?

光センサーの構造と機能をおさらいします。裏面にある2つの“目”は、
一方が発光ダイオード(赤外線)で、他方がフォトダイオード(受光部)です。
家電リモコンの送信部と受信部がセットになったようなもので、
赤外線が白地で反射するか黒地で吸収されるかに応じて、
2つの出力プラグ(今回は左右モーター2個を接続)のいずれか一方に
入力電流を通すよう切り替えます。

だから出力の“オフ”期間はなく
白でオン”になるモーターと“黒でオン”になるモーターが
絶えず交互に動作する状況を利用してコントロールしているはずです。
コントロールとは、状況を判断しながら複数の状態を切り替え続けること
だからです。

 ということは、黒いラインのどこを辿るのか?
端(白と黒の境界)ですね。2つの出力プラグを差し替えることで、
左端が好きなロボットと、右端が好きなロボットに性格が分かれますよ。

 4日目は、最後の競技に向けたロボットの最終調整です。
黒いライン上で出くわした2匹のバグモジョラ(♂)が、
そこのけそこのけ、パワーバトルを繰り広げます。
進路を脱線した方が負け。7体がトーナメント形式で闘いました。

 我こそが勝たんと、様々な工夫が見られましたが、
その効果について考察します。

1) 重くする
  しっかり歩けるよう重心バランスに注意すれば、摩擦力・慣性力を
 上げるので吉でしょう。慣性(かんせい)力は説明していませんが、
 バイクが車に弾き飛ばされるのは、この力のためです。

2) 足裏にゴムを付ける
  今回この点の強化が見られませんでしたが、摩擦力を上げるので吉です。

3) 長い角を付ける
  「相手に早くリーチできる」という理由から何体か見受けられましたが、
 「相手から見ても自分に早くリーチする」こと(相対性)になりませんか?
  これだけなら“おあいこ”ですが、寧ろ自分にとって“凶”です。
 てこの原理により、相手の力が軽く角先にかかるだけで、
 自分の進路が容易に変えられてしまうからです。

  このように、観念的アイデアが物性的効果に結び付かないことは
 よくありますので、もっと深く考えてみましょう。そのためには
 経験と失敗から学ぶ(このまとめを熟読する!)姿勢が大切です。

 今月は長いですね…。まだ続けます。なぜ4本脚を6本脚に増やしたか

a) ムシだから(ごもっとも!)

b) 左3脚と右3脚とは独立駆動(モーター2個、つまり自由度2)であり、
 特に旋回中は片側の脚だけで推進力を生む必要があるところ、片側2脚では、
 前に戻る脚を浮かせて後方へ蹴る足の推進力を妨げないように
 姿勢を安定させることが難しいから

c) 直進時においても、下記2点に起因して、左右の脚の角度(位相)が
 固定的な相関関係をもたない(いつも同位相とか逆位相とは言えない)ため、
 やはり片側の脚ごとに推進力の確保が必要となるから
 (4脚のまま左右が同位相だと、EXILEダンスするだけ)
 ・手動操縦または自動操縦による左右モーターの非同期的オン/オフ
 ・左右モーターの個体差や負荷変動

 ちょっと難しいですが、「なぜ?」という疑問を突き詰めると、
これだけの言葉が出てきます。先生もかなり頭をひねって書いていますので、
「本当かな?」「どういうことかな?」と疑問をもちながら、一字一句を
貪(むさぼ)るように読んで、言葉を調べたり質問をまとめたりしてください。

 自分の言葉で授業まとめを書いたり、ロボット解説書を作成してみると、
頭が良くなって成績が上がりますよ。(学校の宿題より楽しくない?)
今月は宿題を出しておきます。


3. 今月の課題


 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。

 <ベーシックコース>
  ◎ 専用方眼紙にロボットの4面図をスケッチ(1日目)
  ○ テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <アドバンスコース>
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する
  ◎ 下記A. B.のいずれかを提出する(テキスト最終ページを使うとよい)
   A. ロボットの見取図をスケッチする
   B. 次の3点について各100文字程度でまとめる
    1) 4脚から6脚にした理由を述べよ
    2) 光センサーがバグモジョラに果たす役割を述べよ
    3) 周回コースを脱線しにくいのは、ラインの外回りと
     内回りのどちらか、その理由とともに述べよ


4. その他


 3/15~小倉北教室を開講することになりました。
先ずはベーシックコース7~8名からスタートし、
早めにミドル・アドバンスコースも開設して、
互いに振替授業などで利用・交流して頂けるようにしたいと存じます。


東福間教室 佐藤

2015年1月31日土曜日

1月授業内容

1. 1月授業内容<ベーシックコース>
2. 1月授業内容<アドバンスコース>
3. 今月の課題
4. その他


1. 1月授業内容<ベーシックコース『スーパービートル』>


 カブトムシらしく、傍目には四輪車の先頭に角を付けただけのようですが、 この角が崖(机の端)からはみ出すと垂れ下がり、これをタッチセンサー(黒)が検知してモーターを止め、本体の落下を防止する仕組みです。
単純ですが、タッチセンサーによる自動検知の好適な実装例です。


 以前よりタッチセンサーを利用したロボットの製作経験のある生徒は、その取付方法を示した2日目テキストを配る前に、自分なりに取付位置などを工夫して仕上げていましたが、未経験の生徒には案外、その応用方法の発見が難しいものです。

スライドスイッチとタッチセンサー(一種のスイッチ)の両方ともオンのときだけ走るよう、これらとモーターを直列につなぐ必要があることを回路図クイズを出して確認しました。

 テキスト通り製作すると、先月同様、モーターの回転を1/3×1/3=1/9まで減速する仕様です。
多少のばらつきがあっても安全に停止できるよう十分遅くしたのでしょう。


 2日目最後の競技は、崖っぷちレース! 長机の中央部からスタートし、端(=崖)の直前のラインを越えて完全停止するまでの時間を競うスピード勝負です。

但し、落下したら失格。スピードと制動(ブレーキ)距離のバランスが問われる、いわゆるチキンレースです。

 本来、この勝負に勝つためのポイントは以下の通りでした。


a) スピードアップの為に…減速比を1/9→1/3に留めるよう、ギアを組み替えます。


 更に、電池を4本→6本にして電圧アップします。充電池は電圧が低いので不利です。

b) 制動距離を稼ぐ為に…角を長くし、崖への到達を早目に検知します。

 今回、a)のために腐心したのは、全員“電池パワー”だけでした。

確かに、電池の新旧や本数によって2倍の時間差が出ましたので、電圧は大事なポイントです。勝負用電池を常に用意しておきましょう。
 しかし、どれも b)の対策までは不要なほど、遅いスピードでした
多少、電池が弱まっていても、ギアの組み替えで勝てたかもしれませんよ。

2013年7月の同ロボット授業では、高学年の1人が減速比を1/1(等速)まで下げ、止まりきれないほど猛スピードを出すこともありました。
分数の掛け算を知らなくても増速・減速は観察で分かります。

追い追いやっていきますが、11月報、12月報と続けてギア比に触れていますので、製作したロボットを手元にじっくり音読してもらえることを期待します。

2. 1月授業内容<アドバンスコース『バグモジョラ』>


 1ヶ月目の授業です。こちらもムシ型ロボットですが、上級コースですから足がタイヤということはなく、“脚”です。
 1日目は製作の日でしたが、テキストを渡さず4面図のみで挑戦してもらいました。
どのみち、テキストには製作手順が載っていませんから、ヒントとなる完成写真を見せないまでのことです。

 ギアボックスの上面図が分かり易く、脚のリンク機構も簡易なものですので、製作の難易度は高くありませんが、
別個のモーターで独立駆動すべき左右の脚を共通のシャフトで通してしまった失敗例が目立ちました。
 完成すれば、戦車型のリモコンで前進・後退・左右旋回と、自由自在に操縦できることを期待しましたが…、

左右の脚が同位相(付け根のクランク角度が一致)なら前後上下に揺れながらの屈伸運動(横から見ればEXILE風)、逆位相ならその場でジタバタするだけで殆ど進みません。
テキスト抜きで自前で進ませるよう、2日目までの宿題にしましたが、難しかったでしょうか。

 2日目のテキストでは、「昆虫らしく」というのもあって、1日目(4面図)の4本脚を6本脚に増やして位相をずらすことにより、
前に戻る脚を浮かせて後方へ蹴る足の推進力を妨げないことが正解となっていますが、過去には4脚歩行させたロボットもありました。うまくいかないときの自らの創意工夫が本当の力になりますよ。

 なお、追加した真ん中の脚は、前後と位相をずらさないとEXILEダンスを強化するだになってしまいますから、注意してください。

 2ヶ月目は光センサーを組み込みます。

3. 今月の課題


 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。

 <ベーシックコース>
  ◎ テキストp.14の空間図形問題にチャレンジ(1日目)
  ◎ 専用方眼紙にロボットの正面図・平面図・側面図をスケッチ(1日目)
  ○ テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <アドバンスコース>
  ◎ 6脚歩行ロボットを完成させる
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する


4. その他


 電池が弱くてロボットが動かないことがよくあります。予備乾電池と、できれば普段用に充電池4~6本の用意をお願いします。
高価な充電池ですが、100円ショップのもので十分です。

(間違って単3を購入される場合も多いですが、単4です!)


授業に支障がある場合、4本¥108でお買い上げ頂きますことご了承下さい。

 小倉でもロボット教室を開講すべく体験会を実施しています。
先ずはベーシックコースからですが、振替授業などで行き来し、時々交流して頂ければと存じます。

2014年12月31日水曜日

12月授業内容

1. 12月授業内容<ベーシックコース>
2. 12月授業内容<ミドルコース>
3. 12月授業内容<アドバンスコース>
4. 今月の課題
5. その他

1. 12月授業内容<ベーシックコース『がたごとレスキュー隊』>


 救急ロボットです。
1日目では、何の変哲もなさそうな4輪車に留まりましたが、車体底面の地上高(自動車用語でロードクリアランス)が低いため、少しの段差で引っ掛かってしまい、がたごと道はとても無理のようですね。

それでも、ちょっとした工夫があるのです。それはスピードが“遅い”ことです。
 ギアボックスをよく観察してみましょう。
モーター軸に付けたピニオンギア(歯数8)が先ずベベルギア(歯数24)を回し、続いてベベルギアと同軸(つまり等速)のピニオンギア(歯数8)がギアM(歯数24)を回しています。

タイヤはこのギアMと同軸(または等速)です。
歯数8のギアが歯数24のギアを回す構成が2段ありますので、1段目で1/3に減速、2段目でさらに1/3に減速することになり、モーターの回転を1/3×1/3=1/9に減速してタイヤを回しています。
つまり、モーターが9回転してタイヤがやっと1回転する遅さです。
 遅いだけなら、何のメリットがあるのでしょう?


実は回転する力(トルク)が9倍になるという恩恵があるのです。
試しに、タイヤを外したシャフトを手でギュッと摘まんでみてください。
大人でも止められない程に強力ですよ。てこの原理と同じ理屈が働いています。
レスキュー隊として頼もしい力強さが準備できました。


 2日目では、体験生2名も交えてロードクリアランスの問題を解決します。
もっと大径のタイヤを装着できればよいのですが、タイヤLで最大ですので、代案が必要です。

そうです、タイヤをクロールする脚のように装着するのは、瞬間的に地上高を上げる効果を狙っているためです。
バタバタと騒々しいですが、これで多少の凹凸は乗り越えられるようになりました。

あとは、4脚の取り付け方向ですね。4脚とも揃えるのか、左右は揃えて前後でずらすのか、全てを90°ずつずらすのか。
後者ほど、いずれかの脚が地面を掻いている期間が長く、推進効率に優れそうですが。

 最後の競技は、がたごとレース!
がれきに見立てた大小のレゴブロックを敷き詰めて、大きながれきの向こうで待つレゴ人形の救助に向かいます。
結果、4脚とも揃えたロボットは大きながれきで立ち往生し、前後または全ての向きをずらしたロボットが成功していました。
いずれかの脚が接地していないと、せっかく乗り上げたがれきを底面で滑り下りてしまうようです。
 ただ、路面の起伏や摩擦状況により最適な構成が変わり得ますので、4脚とも揃えるのが常に不利と思わないようにしてください。


2. 12月授業内容<ミドルコース『プログラムロボットカー』>


 “プログラム”と“カー”にそそられます。
現ミドルコース生の最終テーマになりました。
“カー”だけに製作も理解も難しくはありませんが、生みの親で、アイデアコンテストで最優秀賞に選ばれた当時小学6年生に脱帽です。

 これまでも、本体の製作時に動作をプログラミングする要素はありましたが、
本体(ハードウェア)とプログラム(ソフトウェア)媒体を明確に分離した点で、初めてのロボットです。
 プログラムとは何でしょう。一連の行動や動作、目などの手順(表)ですね。


本体の設計を変更することなくプログラムだけで動作を決定できる利点があります。
まあ、ゲーム機全盛の現世代には馴染んだ概念でしょうけれど。
コンピュータ類に限らず、テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器まで、現代の殆どの家電にプログラムが組み込まれています。
 本ロボットのプログラム媒体は、赤いロッドを繋ぎ合わせた一本の棒で、その幅(1~3本分)により、右折・直進・左折を指令します。
走行用モーター動力をプログラムロッドの送り用ローラーにも分配しているところがナイスです。

黎明期のコンピュータも、パンチカードと言って、無数のパンチ穴を開けた何十メートルもの紙を送ってプログラムやデータをセーブ・ロードしていましたが、その様を彷彿とさせます。

また、ロッドを円形に組めば無限ループを実現でき、永遠とジグザグ走行や8の字走行を繰り返すこともできます。

 2日目最後の競技に、長机3つの端を使って、コの字形コースを無事に完走するプログラムを設計してもらいました。
単純に円弧を描くコース取りでは、大回りか小回り過ぎて崖から転落してしまいますので、少なくとも短い直進区間が必須です。
フォークリフト同様の後輪操舵なので分かり辛い面もある中、“逆ハンドル”をプログラムしてクリアした人もいましたが、うちの娘は最初から逆ハンドルを切って、あさっての方向に疾走していました。
車の運転が心配です…。


3. 12月授業内容<アドバンスコース『ロボドッグトレーナー』>


 2ヶ月目の授業です。3日目は考察の日です。
主に音センサーの機能と特性、使い方を整理した後、脚のリンク機構を観察しました。
 
平行リンクにより、足裏を(浮かせているときも)地面に対して常に平行に保つことができますが、
これだけでは、上下面を切り開いた段ボールがぺしゃんこに潰れてしまうように、上体を支えることも、足を前後運動することもできません。
平行リンク(平行四辺形)を周期的に変形させて足を運ばせているのが、平行リンクを2点で繋ぎ留めたロッド15アナの役割です。
複雑に見えるリンク機構も、基本的な機能(=設計者の意図)の組み合わせと考えると、分かり易くなります。
リンク機構の正確な動きは予測できるものではありません。
専門家でない先生にも分かりません。

細かいところは試行錯誤で調整すればよいのです。

 4日目はまとめと、久しぶりに発表の場を設けました。
製作したロボットを一人ずつデモンストレーション&プレゼンテーションしてもらい、機能性・デザイン性・プレゼン力の3点について、各自が2ポイントの持ち点を投票して勝者を決める、例のアレです。


毎月やるつもりで、時間がなかなか許してくれませんでした。
せっかく凝らした創意工夫を率直にアピールすれば良い発表になるのに、出る杭は打たれんとする日本的な美徳感からか、みんな控えめです。
今後のアドバンスコースでは必ずやりましょう。

4. 今月の課題


 次回授業日までに完了してください。
 ◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。

 <ベーシック/ミドルコース>
  ◎ テキストp.12/p.14の空間図形問題にチャレンジ(1日目)
  ◎ 専用方眼紙にロボットの正面図・平面図・側面図をスケッチ(1日目)
  ○ テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ◎ 上記授業内容を印刷する等して音読する

 <アドバンスコース>
  ◎ 折り畳み椅子を独自に組み立て、テキストp.17と見比べる
  △ テキスト最終ページにロボットの見取図をスケッチ
   (難しければ、写真撮影したものか、テキスト表紙を模写してもよい)
  ○ 上記授業内容を印刷する等して音読する

5. その他


 クリスマスはいかがお過ごしでしたか。
クリスマスと正月がいっぺんに来るこの時期は、子供にとって格好の資産形成週間ですが…。
 今年も大変お世話になりました。
来春には北九州教室・ロボティクスプロフェッサーコースを開講する予定です。
来年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。よいお年をお迎えください。

東福間教室 佐藤