2.1月の課題
3.12月の解答
4.今後の授業スケジュール
5.お知らせ
1. 1月授業まとめ
1.0 <スタートアップ(全コース)>
割愛します。
1.1 <プレプライマリーコース『アルキング』>
割愛します。
1.2 <プライマリーコース『ロボダック』>
割愛します。
1.3 <ベーシックコース『プテロボドン』>
翼竜(よくりゅう)プテラノドンならぬ、プテ“ロボ”ドンです。んー、これもすごい!
プライマリーコース『ロボダック』も翼(つばさ)を羽(は)ばたかせますが、それだけでなく、翼の先をさらに上下にしならせるメカニズムを組み込(こ)みました。
生物らしいダイナミズムがあふれ出ています。
翼竜は翼が8mにもなったそうですから、鳥とちがってゆっくり羽ばたき、悠々(ゆうゆう)と飛んだことでしょう。
その様子を表現するように、翼もタイヤもゆっくり動かします。
そのために、ギアの噛(か)み合わせを工夫(くふう)して、モーターの速(はや)い回転を遅(おそ)くして使っています。
ギアが噛み合うとき、同じ大きさ同士なら回転スピードは変わりませんが、小さいギアが大きいギアを回すと、回転スピードが遅くなります。
歯の数は、ピニオンギア(うす)が8に対し、ギアM(うす)が24で3倍ありますから、写真のように、ギアMうす①で3倍遅くなって、ギアMうす②でまた3倍遅くなっています。
つまり、ギアMうす②の回転は、モーターから3×3=9倍も遅くなっています。
この先、タイヤLは同じギアMうす③で回しますので、同じスピードです。
翼の方はどうでしょう。
マイタギア④は、ギアMうす②と一緒(いっしょ)に回りますし、
マイタギア⑤は、④と同じギア同士で、
マイタギア⑥は、⑤と一緒(いっしょ)に回って、
マイタギア⑦も、⑥と同じギア同士ですし、
ロッド3アナ⑧は、マイタギア⑦と一緒に回りますので、
ギアMうす②からずっと同じスピードのままですね。
つまり、タイヤLが1回転する間に、翼も上下に1回羽ばたくことになります。
この長くて重い翼を動かすには、大きな力が要(い)りそうです。
実は、ギアを使って回転を9倍遅くすると、力が9倍強くなる作用があります。
よく考えて作られているのですね。
もし、モーターと同じスピードでマイタギアを回せば、羽ばたきが今の9倍速くなるどころか、力不足で止まってしまうでしょう。
写真のようにピニオンギア(うす)とギアM(うす)を入れ替(か)えて、試(ため)してみましょう。
(タイヤLは回りません)
1.4 <ミドルコース『ロボウルフ』>
ガッシリとした脚と大きな胴体を持つ4足歩行ロボットです。
ミドルコースの4足歩行ロボットとしては他に、2022年5月の忠犬ロボット『ロボワン』がありました。
そちらはトコトコと可愛らしく歩くのに対して、ロボウルフはウルフ(狼)の呼び名にふさわしく威風堂々と歩きますね。
ロボウルフ最大の特徴は、凝った設計の脚にありますから、足先の軌跡を良く観察してみましょう。
足を浮かせて前に運ぶとき(遊脚相)と、地面を蹴って後ろへ運ぶとき(立脚相)では、同じ軌跡になりません。
同じ軌跡だと、1歩進んでは1歩戻りそうで、ここまでスムーズには歩けなさそうですね。
この動きを、脚1本につき2つの4節リンクが変形しながら生み出しています(p.19)。
ロボワンでは、基本的な「チェビシェフのリンク機構」のまま、モーターの回転運動を楕円や三日月形の運動に変換していましたが、ロボウルフはもう少し複雑そうです。
歩行中の前足と後ろ足の軌跡を観察すると、足を前に運ぶ際、前足は地面から大きく離れるのに対して、後ろ足は地面を引きずっているように見えます。
詳細を目で追うのは難しいので、コンピュータで足の動きをシミュレーションしてみました。
前足の先端は楕円を描き、後ろ足の先端は8の字を描いていることが分かります。
面白いことに、前脚と後ろ脚はほとんど同じ構成です。
違いは、テキストp.19で解説している通り、ロッド5穴の取り付け位置が1アナ分異なるのみです。
この1アナ分の違いが、足先の軌跡の大きな違いになって現れています。
また、どちらも地面を蹴る期間に足先が加速するように見えますね。
一定速のモーター回転から、立脚相と遊脚相に応じて加減速できるのも歩行リンク機構の特徴です。
他に、4足歩行ロボットの要(かなめ)となるのが、各脚の位相(いそう)関係です。
効率よく推進させるために、各脚を動かす順序が問題となります。
兎(うさぎ)やカンガルーのように跳ねないので、先ずは左右で同じ動きにならないよう180°(真逆に)ずらす必要がありますね。
そして、右脚どうし、左脚どうし、前後でも180°ずらしてあります(*1)。
真っ直ぐに進まない場合は、ギアLに取り付けたベグSの位置を変更するか、
ギアMうすの噛み合いを一旦外し、ギアLの向きを整えて組み付け直しましょう。
歩行ロボットは真っ直ぐに歩かせることが難しい印象がありますが、
ロボウルフはテキスト通りの位相で組み立てるとそこそこ安定して歩いてくれます。
2日目で頭部を組み上げ、精悍な顔つきの狼に仕上げました。
独特の感性を持ったお友達は、代わりに蜘蛛のようなアゴや複数の目を取り付け、不気味な形相に変えていましたが…
狼も蜘蛛もハンティングに長けた生体ということで、最後にサバイバルゲーム“逃走中”をしました。
コースの傍(かたわ)らで待ち構える捕食者たちに捕まらないよう、“一匹”狼がゴールを目指します。
歩みが単調だと、進路が予測されやすく襲われてしまいます。
そこで、プログラムの出番です。
時々歩みを止めたり、後退したりして、捕食者を欺(あざむ)きました。
無けなしに歩行スピードを上げたり、向きを変えたりするよりも、プログラムによるフェイント動作が生存に有利なようでした。
*1 重心などによっても変わるため、これこそが正解というものはありません。
4足の着地順は、実際に動物によっても違いますし、同じ動物でも、歩き方・走り方によって何種類も使い分けています。
左右で位相を180°ずらし、前後も90~180°ずらして、体が左右に揺れ過ぎないようバランスを取れば良いでしょう。
1.5 <アドバンスコース『モゾット②』>
モゾットの3日・4日目です。
左右の足を独立して動かせるように、右足と左足を繋ぐシャフト4ポチをシャフトペグに変え、右用と左用にそれぞれモーターを取り付けました。
これで2つのモーターの回転方向を制御することによって、前進・後退・右旋回・左旋回を自由に行えるようになりましたが、実際にロボットを動かしてみると上手く前進しないことがあります。
歩行ロボット全般に言えることですが、推進するためには右足と左足を交互に動かす必要があります。
(同じように動かすと、屈伸運動になって前に進めませんね)
そういうことならと、モゾットの足を左右でずらした状態からスイッチを入れてみます。
初めのうちは上手く進んでも、次第に進まなくなりました。
これは、左右のモータが正確に同じ速さで回ることはないので、右足と左足が揃う時期がくるためです。
確実に歩ませるために、右足と左足をずらして動かすよう、プログラムで制御します。
テキストp.16以降のプログラムがこの制御を取り入れています。
具体的には次のように制御されます。
①.両足を動かす
②.左足のタッチスイッチが押されたら1秒後に左足を止める
③.右足のタッチスイッチが押されたら両足を動かす
④.①に戻って繰り返す
プログラムは簡素ですが、モゾットの足の動きに照らして考えないと分かり難いため、図式化しました。
縦軸: ロボット本体に対する足の位置(前後)
横軸: スイッチを入れてからの経過時間(秒)
青色: 右足の動き
赤色: 左足の動き
★ : 各足のタッチスイッチが押された時点
プログラムがモゾットの足をどのように制御をするかを見ていきます。
【時間 0~1】
中間位置に左右が揃った状態でスイッチを入れ、プログラム①によって左右の足が動く
【時間 1~2】
左足のタッチスイッチ(赤色★)が押されると、プログラム②によって1秒後に左足が止まる(右足は動き続ける)
【時間 5】
右足のタッチスイッチ(青色★)が押されると、プログラム③によって左足が動き出す
ここまでで、右足が左足より1秒分ずれて遅れた状態になります。
これ以降は時間 5~9 の繰り返しです。
ずらしが完了する【時間 5】前後では、左右の足の位相(いそう)関係(グラフを重ねた時のズレ)に変化があります。
【時間 0~2】ではグラフの山と山が揃っているのに対し、【時間 5】以降ではズレが保たれています。
次にずらし制御される時間 9 では、
左足タッチスイッチ(赤色★)の押下後1秒経過と、
右足タッチスイッチ(青色★)の押下がほぼ同時に起こるため、
左足はほとんど停止することなく動き続けます。
(実際のモゾットも初回のずらし以降では左足は止まるように見えません)
毎回タッチスイッチが押される度に、右足を左足に対して一定間隔遅らせるように制御するので、左右の負荷(ふか)の違いなどで両足が揃ってしまっても修正できます。
実際に観察していても、揃ってきた両足をずらそうと時々左足を待機させる動作がインテリジェントでクールです。
1.6 <プロ1年目コース『不思議アイテムI-2①』>
3ヶ月間の多脚リンクロボットを終え、新しいタームに入りました。
1ヶ月目は、マイコンの入出力として、音と光を操ります。
1日目のテーマは、「超音波距離センサーを使う」です。
超音波とは、人間の耳には聞こえない、概ね20kHz以上(*1)の高い周波数の音を指します。
自然界では、イルカ、コウモリ等の生物が利用し、人工物では、犬笛や、魚群探知ソナーが代表的な利用例です。
利用目的としては、コミュニケーションと対象物・距離感知(反響定位/エコーロケーション)に分けられますが、今回のはセンサーですので、後者の方です。
知ってはいても、実際に活用したり、制御したりしたことは無かったでしょう。
超音波センサーが感知した障害物までの距離をLEDマトリクスに表示するプログラムを試したところ、数cm離した手のひらから90cm超の壁まで、1cm単位で正しく判定することが確認できました。
“泥棒アラーム”など、実用性の高い電子機器がすぐにでも作れますね。
ここで、超音波で距離を計測する仕組みを理解したでしょうか。
目玉のような2個セットの円筒は、同じように見えて(*2)、一方は超音波を出すスピーカで、他方は反射音を拾うマイクです。
340m/秒で音が伝わる空気中において、1/1000秒後に反射音をキャッチしたら、対象物までの距離は 0.34m÷2=17cm ですよ。
1日目の最後は、“テルミンもどき”プログラムで遊びます。
超音波センサーが捉えた距離 dist を用いて、“play(dist*20, …)”と記述すれば、22cmのときにラの音(440Hz)を出し、手を近づければ低く、遠ざければ高い音に変化させることができます。
テルミンとは馴染みのない楽器だったでしょうが、空中の手の位置で音程を操る点は共通です(*3)。
超音波センサーは2つ繋いでいますので、1つは音程用で良いとして、もう1つは実物と同じく音の大きさを変えたいところ、その能力は無いので、音の間隔の変更(連続音~断続音)を司らせています。
こうすることで、音の停止(聞こえないほど小さくする代わりに、間隔を無限にあける)を実現しています。
2つのセンサーが担う機能をいろいろ変えて、面白い楽器に仕立てて遊んで欲しいと思います。
2日目のテーマは、「色で遊ぶ」です。
カラーセンサーボードを接続して、フルカラーLEDを任意の色に光らせたり(出力)、カラーセンサー(1ドットカメラ)で外光を撮影したり(入力)できることを確かめます(*4)。
ここで、全ての色は“光の3原色”の混ぜ合わせで作り出せることを実験します。
テレビ等の映像ディスプレイに採用されているRGBカラー方式の元になる原理です。
昔のパソコンが、モノクロ画面に代わり、カラー表示能力をもったばかりの頃は、赤・緑・青の各色を1ビット(0/1)信号だけで制御したため、2×2×2=8色(デジタルRGB)表示から始まりましたが、メモリやCPU性能の向上に伴って、2ビット64色、3ビット512色、4ビット4096色、6ビット26万色と多色(アナログRGB)表示が進み、現在は8ビット1677万色(フルカラー)が標準です。
ここで、各原色(R・G・B)を多ビットで駆動するということは、例えば2ビットなら4階調(0%, 33%, 66%, 100%)の明るさで光らせることであり、その制御方法として、下記の2方式があることを学びます。
A) アナログ方式 - 階調に応じた電圧や電流値に変える
B) デジタル方式 - 高速な0/1信号波形の時間幅の割合を変える
今回のフルカラーLED表示(*5)にも使われている B)方式をパルス幅変調(PWM)方式と呼び、マイコンやプログラムとの親和性が高いので、デジタル制御回路において多用されています。
ところで、色の再現方法には、RGB色モデルの他にも、色味(色相H)・鮮やかさ(彩度S)・明るさ(明度V)を指定して表すHSV色モデルもあり、これらの3次元色空間モデルのいずれでも同一色を表現したり、相互に変換したりできます。
最後に、“光の3原色”について、付け加えておきます。
3原色と言われると、物理学的に赤・緑・青が全ての色の元となる“純色”であって、黄や紫などは“混色”に過ぎないとの錯誤に陥りそうですが、実は、人間の視覚の都合による決め付けに過ぎません。
人間の網膜には、赤・緑・青の光(波長)に“良く”反応する3種の視細胞(赤錐体・緑錐体・青錐体)が高密度に分布しており、この錐体の興奮度合い(電気信号)が視神経を通して脳の視覚野に伝わり、その組み合わせ次第を“勝手に”色として感じているのです。
テレビやカメラがRGB方式を採るのも、この視覚特性に由来しており、人間が「実際の風景を忠実に再現した」と感じる4Kハイビジョン映像も、他の生物や宇宙人の目には、実物とは随分異なる映像色に映るかもしれません。
また、赤と緑の間の単波長光が目に入っても、赤錐体と緑錐体の両方が弱く反応して「黄色」と感じます。
つまり、人間は、黄色に感じる光が赤と緑の混合なのか、単色光(*6)なのかを区別できません。
もっと言うと、0.01nm以下から100,000,000,000,000nm(百km)以上の波長まで連続的に存在する電磁波のうち、400~800nmの可視光というごく狭い帯域に人間の視覚が割り当てた“色”という概念は、まやかしに過ぎないのです(*7)。
閑話休題し、2ヶ月目は、カラーセンサーを利用したトレーサー(追跡)ロボットを組み立てます。
*1 何kHzの音まで聞こえるか試せる“耳年齢”アプリというものがありますが、悲しいかな、中年の先生には15kHz辺りが限界です。10代の皆さんには18kHz以上まで聞こえるようですが、先生にとっては既に超音波の域です…。
*2 いや、実は同一部品でしょう。スピーカ(出力)とマイク(入力)は、モーターと発電機の関係に似て、原理的に同じ構造です。
パソコンやオーディオ用のイヤホンも、マイク端子に挿して話しかけると、立派にマイクとして働きます。
*3 実物は、アンテナと手との間の静電容量の変化を、発振周波数(音の高さ)の変調に利用しています。
*4 LED発光および撮影自体はフルカラーRGB色モデルで処理していますが、サンプルプログラム ColorSensor1 や OneDotCamera[Average] 中では、一旦HSV色モデルに変換し、彩度(S)と明度(V)の情報を捨て、色相(H)のみを残して再生するため、視覚とは異なる色に写りますが、色味としては正しいと信じましょう。
*5 サンプルプログラム ColorLED2 で各色を100段階に調整できることからすれば、7ビット(128階調)209万色相当なのでしょうか。
*6 オレンジ1色のナトリウムランプ(単波長590nmの光)が照らすトンネル内の世界では、もはや「色」は存在しないのです…。
*7 この世の物質にも“色”という実体は無く、単に電磁波の波長ごとの反射率や吸収率の違いによる波長分布(スペクトル)の変化と、感覚器官による勝手な解釈があるに過ぎません。
1.7 <プロ2年目コース『倒立振子ロボット①』>
冬タームに入りました。先月のエンコーダーに続き、今月は姿勢センサーと、魅力的なテーマが目白押しです。
検出値を7セグLEDに表示したり、周波数を変調して音の高低でヒアリングしたり、電子部品が好きな人には、まさに垂涎の的(すいぜんのまと)です。
姿勢センサーは、別名、“加速度センサー”や“ジャイロセンサー”と呼ばれ、ロボットの運動や向き、傾きを検出します。
ロボットと言うに及ばず、ゲームコントローラーやスマホ、カーナビ等、かなり身近にお世話になっているセンサーです。
もっと詳細を見ると、指先に乗る半導体チップ内に、下記の4種10センサーが集積されています。
1) 3軸(XYZ)加速度センサー
2) 3軸(XYZ)角速度センサー
3) 3軸(XYZ)地磁気センサー
4) 温度センサー
技術が発達して、夢のような時代に生きているのです。当たり前ではありません。
角(速)度センサーの元である、19世紀に登場した機械(回転コマ)式姿勢センサー“ジャイロスコープ”は、地球儀のサイズです。
加速度センサーは、おもりを付けたバネの他端を長さ方向に変位(加速)させると、その激しさに比例してバネが伸び縮みする原理です。
地磁気センサーは、方位磁針ですね。これらを3つずつ入れているようなものなのです。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems = 微小電気機械装置, メムス)技術と言って、従来の機械式とは実装・検知方法が多少異なりますが、集積回路の微細加工技術を応用して、半導体チップ内に微小な機械部品を組み上げている点は同じです。
こんな精巧なものが数百円で買えて、おまけに温度センサーも付く余裕っぷりです。
さて、高校物理に立ち入る物理量が遠慮なく出現しました。“加速度”と“角速度”です。
読んだ響きが似ていますが、全く非なるものです。
加速度[m/s2] = 速度の変化[m/s] ÷ 時間[s]
加速度は、速度ではありません。「単位時間当りの加速の度合い」です。
加速とは、スピードを変えることですが、加速度と言えば、それがどれだけ素早く行われたか、その凄さを数値化したいので、速度の変化を時間(秒=s)で割ります。
なぜ“速度”センサーではなく、より難しい概念の“加速度”センサーかと言えば、「その方が計り易いから」です。
いや、車のスピードメーターは簡単ですよ、タイヤの回転数が分かるので。
しかし、それは地面という「絶対基準」があるから故です。
航空機になれば話は別で(*1)、宇宙空間ではもう何だか分からなくなります(*2)。
一方、加速度なら、「どこでも、どんなときでも分かる」のです。
それは、振動もなく滑走する新幹線の中で目と耳を塞げば、一体、止まっているのか一定スピードで走っているのか分からないのに対し、加減速時は必ず体に“慣性力”を感じる(物体が質量と加速度に比例した抗力を生む)現象です。
物体に働く力F[N] = 質量m[kg] × 加速度a[m/s2]
摩擦力だらけの地球上では、「運動する物体はやがて静止する」のが当たり前ですが、「物体は外力を加えなければスピードを変えない」「変えるスピードの分だけ反力を喰らう」のが宇宙の真理『慣性の法則』です(*3)。
真っ暗闇のジェットコースターでも、微小時間単位での加速度をセンシングすれば、速度はその積み重ね(高校数学の積分)なので計算プログラムで求まりますが、初期速度や累積誤差に対処する必要があります。
但し、地球上は最初から鉛直(Z軸)下向きに“重力加速度”(G≒9.8m/s2) が発生している特殊な場ですので、これを差し引いて処理しなければ、我々は延々と天空に打ち上げられっ放しになります。
X軸とY軸の加速度がともにゼロであれば水平、このときのZ軸加速度センサーで重力加速度を計測できます(*4)。
角速度は、回転速度のことです。回転数ではなく角度を使い、「単位時間当りの角度の進み具合」です。
角速度[deg/s] = 角度の変化[deg] ÷ 時間[s] (degは角度°のこと)
角速度センサーは、機械式ジャイロスコープに代わるもので、3軸(XYZ)あるので、あらゆる向きへの回転を検出できます(*5)。
こちらは、“角加速度”よりも先に角速度を直接読み出せるセンサー構成になっていますが、もちろん角加速度(高校数学の微分)も角度(積分)も計算で求まります(*6)。
角度を表示するサンプルプログラムが面白いですね。
机上の水平面内でどんな速さで回転させても、高精度に角度を7セグ表示したり(電子分度器?)、常に一方向を指す直線をLEDマトリクス表示したり(ラピュタ飛行石の光?)、
傍目(はため)に「何を手掛かりにして分かるの?」と不思議な感じを醸します。
あっ、それで、タイトルの『倒立振子』とは?
ほうきを逆さに立てて、手のひらの上で「おっとっと」とやる、アレです。
ロボットが片足で立ったり、一輪車を漕いだりする時代ですから、そんなこともできるんですね。次月以降も楽しみです。
*1 飛行中に先ず計測できるのは、対気速度(大気に対する速さ)であり、GPS等による計測技術なしでは、対地速度(地表に対する速さ)を割り出すのは簡単ではありません。
大気には流れ(風・気流)があるので、両者の速度は一致しません。
*2 基準となる大地や大気がないので、速度も分からなければ気にする必要すらない場合もあります。アインシュタインの相対性原理の出発点です。
*3 この特性を利用したのが、だるま落としや、テーブルクロス引きです。
*4 センサーを傾ければZ軸の重力加速度がX/Y軸の加速度に分配(高校数学の三角関数)されるので、サンプルプログラム[inclinometer]のように傾斜角も導出できますが、一般的には角速度センサーを読み出す方が簡単で、安定(高速追従)します。
*5 一般的なMEMSセンサーでは、「コリオリの力を検出する振動型ジャイロスコープ」を組み込むようです。勉強しないと分かりませんね…。
*6 積分で求める角度(時々刻々の速度データを積算して移動距離を割り出すことに相当)には、累積誤差がつきもので、次第にずれが拡大していきますので、定期的なリセットや校正が必要です。
1.8 <プロ3年目コース『二足歩行ロボット①』>
冬タームに入り、二足歩行の制御を学びます。
ベーシックコース『ウォーカータクシー』や、アドバンスコース『アルクンダーZ』としても二足歩行ロボットが登場しましたが、
片足の浮かせ方や脚の運び方、上体の進ませ方(の組合せ)は三者三様です(*1)。
脚の運び方は、『ウォーカータクシー』と『アルクンダーZ』が同様(平行リンクにより足裏を水平に保った回転運動)ですが、本ロボットでは、左右それぞれの足首をひねる動きだけです。
片足の浮かせ方としては、『アルクンダーZ』と本ロボットが重心移動を利用する(上体を左右に傾ける)点は共通ですが、
左右の足に高低差をつけるのに『アルクンダーZ』が前述の脚の運び方によるものであるのに対し、
本ロボットでは、重心移動と同時並行して行なう、一石二鳥のリンク機構です。
加えて、片足で立って足首をひねることにより、上体を左右にひねりながら進む動きもユニークです。
以上の動きは、腰(脚の上下動と上体そらし)に1個と、両足首に1個ずつ、計3個のサーボモーターで実現しています。
それぞれを独立して動かせる無線コントローラープログラムにより、先ずは手動操縦で歩行させました。
正しい手順に則れば難なく歩けますので、同じようにサーボ駆動命令を並べることで自動歩行も実現できそうです(*2)。
次月以降、これに両腕のサーボや超音波センサー入力、音や表示出力の機能を足して、自律させていきましょう。
*1 これらに限らず、二足歩行には様々な機構・制御方式がありますが、ロボット教室のベーシックコースからプロコースまで、どの二足歩行ロボットも「静歩行」に分類されます。
簡単に言えば、かなりゆっくり歩行動作するので、いつでも安定して停止できるような姿勢を保つ(重心が着地した足裏の上空にある)方式です。
これに対し、人間や動物、ASIMOが普通に歩く時は「動歩行」と呼ばれ、静的には不安定(重心が着地した足裏の上空から外れる)ながら、動的には安定したスムーズな繰返し動作となる歩行方式で、ロボットには高度なセンシングやフィードバック制御が要求されます。
*2 手順を間違えて、一歩進んでは後ろに下がる、おろおろした動きに笑えましたね。
2. 1月の課題
<スタートアップ(全コース)>
特にありません
<プレプライマリーコース> (プライマリーではありません)
- オリジナル図形プリント
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotPP2301-Q.pdf
<プライマリーコース>
- オリジナル図形プリント
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotP2301-Q.pdf
<ベーシックコース>
- 授業まとめを精読する(概ね3年生以上/低学年は補助の下で)
- オリジナル課題プリント(3面図+設問)
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotB2301-Q.pdf
<ミドルコース>
- 授業まとめを精読する
- オリジナル課題プリント(3面図+設問)
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotM2301-Q.pdf
<アドバンスコース>
- 授業まとめを精読する
- オリジナル課題プリント(見取図+設問)
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotA2212-Q.pdf (12月配信済み)
<プロ1年目コース>
- 授業まとめを精読する(該当テキストページを見ながら)
- テルミンプログラム[USSTone2/3]を超音波センサーの特性に応じて調整し、
自分好みの演奏しやすい楽器に仕立てて一曲披露する(1日目)
《ヒント》
音程がバイオリンのように連続的ではなく、ギターのように段階的であるように、
各音を鳴らす手の位置の区間をif文で定める
<プロ2年目コース>
- 授業まとめを精読する(該当テキストページを見ながら)
<プロ3年目コース>
- 授業まとめを精読する(該当テキストページを見ながら)
3. 12月の解答
<プレプライマリーコース>
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotPP2212-A.pdf
<プライマリーコース>
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotP2212-A.pdf
<ベーシックコース>
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotB2212-A.pdf
<ミドルコース>
http://robocobo.sakura.ne.jp/blog/HW/RobotM2212-A.pdf
<アドバンスコース>
翌テーマ1ヶ月目(来月)に配信します
4. 今後の授業スケジュール
――――――――――【佐藤教室長】――――――――――
[東福間]第1・3土原則<学習ルームでこぼこ>
- 13:30~ ベーシック/プライマリ
- 15:30~ ミドル
- 17:30~ アドバンス
⇒ 2/4, 18, 3/4, 18, 4/1, 15
[東福間プロ]第2・4日原則<学習ルームでこぼこ>
- 10:00~ プロ1年目
- 13:00~ プロ2年目
- 16:00~ プロ3年目
⇒ 2/12, 26, 3/12, 26, 4/9, 23
[中間]第2・4土原則<なかまハーモニーホール>
- 13:30~ ベーシック/プライマリ
- 15:30~ ミドル
- 17:30~ アドバンス/プロ1年目
- 19:00~ プロ2・3年目
⇒2/11 第1回 3F会議室2
2/25 第2回 3F会議室2
3/11, 25, 4/8, 22
[小倉北]第1・3日原則<ムーブ>
- 10:30~ ベーシック/プライマリ
- 13:00~ ミドル
- 15:00~ アドバンス
- 12:30~ プロ1年目
- 15:00~ プロ2・3年目
⇒2/ 5 第1回 5F小セミナー
2/19 第2回 5F小セミナー
3/5, 19, 4/2, 16
――――――――――【中野教室長】――――――――――
[八幡東]第1・3土原則<レインボープラザ4F>
- 13:30~ ベーシック/プライマリ
- 15:30~ ミドル
- 17:30~ アドバンス
⇒ 2/4, 18, 3/4, 18, 4/1, 15
[小倉南]第2・4日原則<総合農事センター2F>
- 10:30~ ベーシック/プライマリ
- 13:00~ ミドル
- 15:00~ アドバンス
⇒ 2/12, 26, 3/12, 26, 4/9, 23
5. お知らせ
1) 2月景品交換会
3ヶ月毎の宿題ポイント交換会を下記授業日に開催します。
ポイントカードを忘れずに、早めに来て下さい。
[東福間]2/18
[八幡東]2/18
[小倉北]2/19
[中 間]2/25
[小倉南]2/26
2) 12月課題 高得点者 []内は教室と学年
◆プレプライマリ【1名平均 図形5.0】
5点…星野[小倉北 年中]
◆プライマリ【3名平均 図形4.3】
5点…荒川[小倉北2]
◆ベーシック【18名平均 図面3.3+設問2.0=5.3】
10点…土屋[小倉北2]
9点…なし
8点…なし
7点…山根[八幡東1], 古川[小倉北3], 有松[小倉南3], 井上[小倉南2]
◆ミドル【13名平均 図面3.0+設問1.1=4.1】
10点…なし
9点…なし
8点…諭[小倉北4]
7点…なし
6点…なし
東福間・中間・小倉北教室 佐藤 / 八幡東・小倉南教室 中野