2.今月の課題
3.今後の授業スケジュール
4.お知らせ
1. 1月授業内容
1.0 <スタートアップ>
割愛します。
1.1 <ベーシックコース『親子マーチ』>
親(前輪)と子(後輪)がタンデムを組んだ4輪車ロボットには違いありませんが、モーターはタイヤを一切(いっさい)回しません。
モーターの仕事は、親の腕(クランク)を回すことで子を引き寄せたり遠ざけたりするだけです。
とは言え、親とて足は自由回転するタイヤ。親子とも前後しながら、付かず離れずを繰り返すだけで全体としては進まず、下手な二人三脚のようで滑稽(こっけい)です。
1日目はここまで。
さて、この親子をうまく前進させる仕掛けが何か必要です。
進まない親子ロボットを観察すると、腕の伸縮(しんしゅく)運動(*1)に連動して、タイヤが前へ後ろへ交互(こうご)に回っており、移動量は差し引きゼロです。
このタイヤを、「前方向へは回るが後ろ方向へは回らない」ようにできれば、もはや進む他に道はありませんよね!
知る人ぞ知る、「ラチェットによる回転方向の制御(せいぎょ)」です。
2日目テキストの通り、タイヤの逆回転を阻止(そし)するストッパーを当てただけで、「前輪を止めて後輪を進め、後輪を止めて前輪を進める」動作を繰り返すようになり、今までが嘘(うそ)のようにテンポよく進めるようになりました。
二人三脚というより、尺取虫(しゃくとりむし)の要領(ようりょう)ですね。
輪ゴムでストッパーの押し付け力を調整します。
あまりに強く押し当て、前方向にも回りにくくなった失敗例もありましたが、軽く当てるだけで、10°くらいの急な坂道すら、ずり下がらずに上れるようになりました。
回転を一方向に制限するだけの仕掛けが、こんなにも有用なのですね(*2)。
テキストに頼らず、独自のすばらしい発明の数々も生まれていました。
授業最後の競技は、登坂(とうはん)チャレンジ!
長机を次の3段階に傾け、ラチェット(ストッパー)の実装アイデアと性能を競います。
・レベル1 … 約 5°;成功率70%の普通レベル
・レベル2 … 約10°;成功率30%のハイレベル
・レベル3 … 約15°;成功率5%未満の達人レベル
坂を上るためには、まず、後ろにずり下がらないことが大事です。
ストッパーがちゃんとタイヤに当たるようになっていれば、ほぼレベル1クリアです。
ですが、あまりにストッパーを強くすると前進の抵抗(ていこう)にもなります。
レベル2のきつい坂をクリアするには、ロボットを軽く手で押しても進むスムーズさが必要になります。
レベル3にもなると、重心が後ろの子ロボットに寄(よ)り、親ロボットのタイヤに掛(か)かる荷重(かじゅう)が軽くなって滑(すべ)ったり浮(う)いたりし、子ロボットを引き上げられなくなります。
こうなると、「親ロボットを重くする」のが思い付くアイデアですが、ロボット全体が重くなるのも上り坂には辛(つら)いですよねぇ。
実は、『てこの原理』を応用すれば、「軽いおもりでタイヤに重い荷重を掛ける」なんて魔法も使えるのです。
親ロボットの鼻をピノキオみたいに長く伸ばして、その先に少しおもりを付けましょう。
18°くらいまで上れちゃいますよ。
*1 クランク機構を用いて、モーターからの回転運動を往復運動に換(か)えて実現しています。
*2 自転車のペダル(正確には後輪のハブ内)にもラチェットが組み込まれています。
このおかげで、ペダルを休めても車輪は空回り(ペダルの逆回転に相当)することができます。
自転車の画期的な技術革新と言われています。
1.2 <ミドルコース『テケテケドリ』>
第5回アイデアコンテスト全国大会(2015年)ベーシックコース最優秀賞作品(小3)がベースの、ロボット教室カリキュラムとして初登場のダチョウロボットです。
その静的デザインのみならず、足取りや首振りなどの動的アクションに設計センスの高さが光ります。
隙(すき)あらば余剰パーツで武器を製造する過激派の男子には受けないかもしれない、実に可愛らしいだけのロボットに見えますが、高橋智隆先生のお眼鏡に適(かな)い、ミドルコースに登場したのには訳があると考えるべきでしょう。
ダイナミックに動くダチョウ本体には、動力源のモーターが内蔵されておらず、回転する“長い”シャフトで動力を伝える点が斬新です(*1)。
このような動力伝達装置をドライブシャフト(またはプロペラシャフト)と呼び、世の産業機械ではよく使われています。
道路に目を向ければ、トラックやスポーツカーが、前部のエンジンから遠い後輪を回すのに利用しています(*2)。
二輪車(自転車・バイク)ではチェーンで後輪を駆動するのが普通ですが、ドライブシャフトを利用する例もあります。
ドライブシャフトを採用する最大のメリットは、可動部(車輪・脚)を、大きくて重たい動力源(エンジン・モーター)から切り離し、軽くコンパクトにできることです。
胴体の軽量化が、テケテケドリに軽快なステップを歩ませるのに貢献しています。
また逆に、テケテケドリの周回コースの中心に置く箱(土台)に、電池ボックスやモーターが内蔵され重くなることで、跳ね回るテケテケドリを駆動しながらも安定して支えることが可能になります(*3)。
こうして、2足歩行ロボットにとって肝心の、
・左右のバランスをとること
・軽く作ること
の双方を実現しながら、さらに動力エネルギーまで伝える“一石三鳥”の働きを1本のシャフトが担っているのです。すばらしい機能美です。
とは言え、戦車の砲塔(ほうとう)のように、土台の上でシャフトを振り回す旋回部(回転塔)の高さがテケテケドリと合わず、シャフトが水平でない場合は、躓(つまづ)きがちでしたね。
左右の脚に掛かる荷重のバランスが崩れたり、床材によっては、足裏のグロメット(ゴム)との摩擦力が過度に効いたりすることが原因です。
上手に歩む条件を探り出せば、かなり快調(怪鳥?)になります。
写真は、何ともメカメカしい、中野先生の渾身(こんしん)の改造作です。
ドライブシャフトを等速ユニバーサルジョイントに変えて、テケテケドリの上下動を吸収し、多少の段差も乗り越えられるようにしました(*4)。
もっとも、ユニバーサルジョイントの自由度の高さが、左右に倒れないよう支える機能を失わせるため、回転塔とトリの背中を平行リンクで結び、上下動しても常に直立させています。
テキストのままでは、ノート1冊分の段差を上ろうにも、すぐに後ろにコケてしまいますが、これは数cmの凹凸も平気です。
さて、ダチョウ側に目を惹(ひ)かれがちですが、中央の回転塔にも、普段あまり見かけない面白い機構が備わっています。
ドライブシャフトからダチョウを取り外して、スイッチを右(プラグと反対)側に入れると、回転塔が時計回りに勢いよく回転します。
この回転が不思議なのは、ダチョウを取り付けて歩かせている時と比べると、逆回りで、しかもかなり高速なことです。
ここから、回転塔内のギアトレーンが、テケテケドリの歩むスピードや周回方向を決定付けている訳ではないことが分かります。
さらに、勢いよく回る回転塔を手で止めてみても、さもお構いなしと言わんばかりに、モーターは軽快に回り続けます。変ですね。
回転部(ギアやタイヤ)を無理矢理止めてしまえば、モーターも唸りを上げたまま止まってしまうのが常のはずです。
但し、このとき、ドライブシャフトは回転しており、これまで止めようとすると、さすがにモーターも苦しそうです。
実は、これは差動歯車装置の一種であり、モーターの回転は、シャフトの回転でも、回転塔の旋回でも、どちらでも消費できる機構になっており、次の関係が成立しています。
モーター回転数(スイッチ右) = シャフト回転数(ダチョウ前進方向) + 回転塔の時計回り回転数(ダチョウ後退方向)
だから、モーター回転数100%を使って、シャフトだけ回転しても、回転塔だけが旋回しても、50%ずつ分け合うのでも、合計100%になりさえすれば何でも可能なのです(*5)。面白いですね。
テケテケドリを外して、なぜ回転塔の方がほぼ100%で回ろうとするのかは、負荷(摩擦力)の差で決まります。
つまり、ドライブシャフトを回すよりも楽になっているからで、設計が異なれば逆になっても不思議ではありません。
*1 短いシャフトに複数枚のギアを通して動力を伝えるのなら、従来からやっています。
*2 トラックの荷台の下で、走行に合わせてクルクル回る鉄の棒を見たことがあるでしょう。
*3 テケテケドリが片脚を浮かしても立っていられるようになります。
*4 同一直線上に並ばない(回転軸がずれた)ドライブシャフト同士を繋ぐ継手(つぎて)として、ユニバーサルジョイント(自在継手)というジョイント機構が産業利用されていますが、これはミドルコースで別の機会に学びます。
*5 モーター100% = シャフト110% - 回転塔10%(反時計回り)の関係すら可能です。
1.3 <アドバンスコース『バグモジョラ』>
1ヶ月目の授業です。ムシ型ロボットですが、上級コースですから足がタイヤということはなく、“脚”です。
1日目は製作の日で、4面図を頼りに組み立てます。
テキストを見ても製作手順が載っていませんから、ヒントとなる完成写真をヒントにするまでのことです。
ギアボックスの上面図が分かり易く、脚のリンク機構も簡易なものですので、製作の難易度は高くありませんが、別個のモーターで独立駆動すべき左右の脚は、共通の長いシャフトを1本通すのではなく、2本の短いシャフトで分けていることに気づくかどうかがポイントでした。
完成すれば、戦車型のリモコンで前進・後退・左右旋回と、自由自在に操縦できることを期待しましたが…、
左右の脚が同位相(付け根のクランク角度が一致)なら前後上下に揺れながらの屈伸運動、逆位相ならその場でジタバタするだけで殆ど進みません。
2日目のテキストでは、「昆虫らしく」というのもあって、1日目(4面図)の4本脚を6本脚に増やして位相をずらすことにより、前に戻る脚を浮かせて後方へ蹴る足の推進力を妨げないことが正解となっていますが、過去には4脚歩行させたロボットもありました。
うまくいかないときの自らの創意工夫が本当の力になりますよ。
なお、追加した真ん中の脚は、前後と位相をずらさないと屈伸運動を強化するだけになってしまいますから、注意してください。
2ヶ月目は光センサーを組み込みます。
1.4 <プロ1年目コース『不思議アイテムII(1)』>
3ヶ月間の多脚リンクロボットを終え、新しいタームに入りました。
1ヶ月目は、マイコンの入出力として、音と光を操ります。
1日目のテーマは、「超音波距離センサーを使う」です。
超音波とは、人間の耳には聞こえない、概ね20kHz以上(*1)の高い周波数の音を指します。
自然界では、イルカ、コウモリ等の生物が利用し、人工物では、犬笛や、魚群探知ソナーが代表的な利用例です。
利用目的としては、コミュニケーションと対象物・距離感知(反響定位/エコーロケーション)に分けられますが、今回のはセンサーですので、後者の方です。
知ってはいても、実際に活用したり、制御したりしたことは無かったでしょう。
超音波センサーが感知した障害物までの距離をLEDマトリクスに表示するプログラムを試したところ、数cm離した手のひらから90cm超の壁まで、1cm単位で正しく判定することが確認できました。
“泥棒アラーム”など、実用性の高い電子機器がすぐにでも作れますね。
ここで、超音波で距離を計測する仕組みを理解したでしょうか。
目玉のような2個セットの円筒は、同じように見えて(*2)、一方は超音波を出すスピーカで、他方は反射音を拾うマイクです。
340m/秒で音が伝わる空気中において、1/1000秒後に反射音をキャッチしたら、対象物までの距離は 0.34m÷2=17cm ですよ。
1日目の最後は、“テルミンもどき”プログラムで遊びます。
超音波センサーが捉えた距離 dist を用いて、“play(dist*20, …)”と記述すれば、22cmのときにラの音(440Hz)を出し、手を近づければ低く、遠ざければ高い音に変化させることができます。
テルミンとは馴染みのない楽器だったでしょうが、空中の手の位置で音程を操る点は共通です(*3)。
超音波センサーは2つ繋いでいますので、1つは音程用で良いとして、もう1つは実物と同じく音の大きさを変えたいところ、その能力は無いので、音の間隔の変更(連続音~断続音)を司らせています。
こうすることで、音の停止(聞こえないほど小さくする代わりに、間隔を無限にあける)を実現しています。
2つのセンサーが担う機能をいろいろ変えて、面白い楽器に仕立てて遊んで欲しいと思います。
2日目のテーマは、「色で遊ぶ」です。
カラーセンサーボードを接続して、フルカラーLEDを任意の色に光らせたり(出力)、カラーセンサー(1ドットカメラ)で外光を撮影したり(入力)できることを確かめました(*4)。
ここで、全ての色は“光の3原色”の混ぜ合わせで作り出せることを実験しました。
テレビ等の映像ディスプレイに採用されているRGBカラー方式の元になる原理です。
昔のパソコンが、モノクロ画面に代わり、カラー表示能力をもったばかりの頃は、赤・緑・青の各色を1ビット(0/1)信号だけで制御したため、2×2×2=8色(デジタルRGB)表示から始まりましたが、メモリやCPU性能の向上に伴って、2ビット64色、3ビット512色、4ビット4096色、6ビット26万色と多色(アナログRGB)表示が進み、現在は8ビット1677万色(フルカラー)が標準です。
ここで、各原色(R・G・B)を多ビットで駆動するということは、例えば2ビットなら4階調(0%, 33%, 66%, 100%)の明るさで光らせることであり、その制御方法として、下記の2方式があることを学びました。
A) アナログ方式 - 階調に応じた電圧や電流値に変える
B) デジタル方式 - 高速な0/1信号波形の時間幅の割合を変える
今回のフルカラーLED表示(*5)にも使われている B)方式をパルス幅変調(PWM)方式と呼び、マイコンやプログラムとの親和性が高いので、デジタル制御回路において多用されています。
ところで、色の再現方法には、RGB色モデルの他にも、色味(色相H)・鮮やかさ(彩度S)・明るさ(明度V)を指定して表すHSV色モデルもあり、これらの3次元色空間モデルのいずれでも同一色を表現したり、相互に変換したりできます。
最後に、“光の3原色”について、付け加えておきました。
3原色と言われると、物理学的に赤・緑・青が全ての色の元となる“純色”であって、黄や紫などは“混色”に過ぎないとの錯誤に陥りそうですが、実は、人間の視覚の都合による決め付けに過ぎません。
人間の網膜には、赤・緑・青の光(波長)に“良く”反応する3種の視細胞(赤錐体・緑錐体・青錐体)が高密度に分布しており、この錐体の興奮度合い(電気信号)が視神経を通して脳の視覚野に伝わり、その組み合わせ次第を“勝手に”色として感じているのです。
テレビやカメラがRGB方式を採るのも、この視覚特性に由来しており、人間が「実際の風景を忠実に再現した」と感じる4Kハイビジョン映像も、他の生物や宇宙人の目には、実物とは随分異なる映像色に映るかもしれません。
また、赤と緑の間の単波長光が目に入っても、赤錐体と緑錐体の両方が弱く反応して「黄色」と感じます。
つまり、人間は、黄色に感じる光が赤と緑の混合なのか、単色光(*6)なのかを区別できません。
もっと言うと、0.01nm以下から100,000,000,000,000nm(百km)以上の波長まで連続的に存在する電磁波のうち、400~800nmの可視光というごく狭い帯域に人間の視覚が割り当てた“色”という概念は、まやかしに過ぎないのです(*7)。
閑話休題し、2ヶ月目は、カラーセンサーを利用したトレーサー(追跡)ロボットを組み立てます。
*1 何kHzの音まで聞こえるか試せる“耳年齢”アプリというものがありますが、悲しいかな、中年の先生には15kHz辺りが限界です。10代の皆さんには18kHz以上まで聞こえるようですが、先生にとっては既に超音波の域です…。
*2 いや、実は同一部品でしょう。スピーカ(出力)とマイク(入力)は、モーターと発電機の関係に似て、原理的に同じ構造です。
パソコンやオーディオ用のイヤホンも、マイク端子に挿して話しかけると、立派にマイクとして働きます。
*3 実物は、アンテナと手との間の静電容量の変化を、発振周波数(音の高さ)の変調に利用しています。
*4 LED発光および撮影自体はフルカラーRGB色モデルで処理していますが、サンプルプログラム ColorSensor1 や OneDotCamera[Average] 中では、一旦HSV色モデルに変換し、彩度(S)と明度(V)の情報を捨て、色相(H)のみを残して再生するため、視覚とは異なる色に写りますが、色味としては正しいと信じましょう。
*5 サンプルプログラム ColorLED2 で各色を100段階に調整できることからすれば、7ビット(128階調)209万色相当なのでしょうか。
*6 オレンジ1色のナトリウムランプ(単波長590nmの光)が照らすトンネル内の世界では、もはや「色」は存在しないのです…。
*7 この世の物質にも“色”という実体は無く、単に電磁波の波長ごとの反射率や吸収率の違いによる波長分布(スペクトル)の変化と、感覚器官による勝手な解釈があるに過ぎません。
1.5 <プロ2年目コース『倒立振子ロボット(1)』>
冬タームに入りました。先月のエンコーダーに続き、今月は姿勢センサーと、魅力的なテーマが目白押しです。
検出値を7セグLEDに表示したり、周波数を変調して音の高低でヒアリングしたり、電子部品が好きな人には、まさに垂涎の的(すいぜんのまと)です(*1)。
姿勢センサーは、別名、“加速度センサー”や“ジャイロセンサー”と呼ばれ、ロボットの運動や向き、傾きを検出します。
ロボットと言うに及ばず、ゲームコントローラーやスマホ、カーナビ等、かなり身近にお世話になっているセンサーです。
もっと詳細を見ると、指先に乗る半導体チップ内に、下記の4種10センサーが集積されています。
1) 3軸(XYZ)加速度センサー
2) 3軸(XYZ)角速度センサー
3) 3軸(XYZ)地磁気センサー
4) 温度センサー
技術が発達して、夢のような時代に生きているのです。当たり前ではありません。
角(速)度センサーの元である、19世紀に登場した機械(回転コマ)式姿勢センサー“ジャイロスコープ”は、地球儀のサイズです。
加速度センサーは、おもりを付けたバネの他端を長さ方向に変位(加速)させると、その激しさに比例してバネが伸び縮みする原理です。
地磁気センサーは、方位磁針ですね。これらを3つずつ入れているようなものなのです。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems = 微小電気機械装置, メムス)技術と言って、従来の機械式とは実装・検知方法が多少異なりますが、集積回路の微細加工技術を応用して、半導体チップ内に微小な機械部品を組み上げている点は同じです。
こんな精巧なものが数百円で買えて、おまけに温度センサーも付く余裕っぷりです。
さて、高校物理に立ち入る物理量が遠慮なく出現しました。“加速度”と“角速度”です。
読んだ響きが似ていますが、全く非なるものです。
加速度[m/s2] = 速度の変化[m/s] ÷ 時間[s]
加速度は、速度ではありません。「単位時間当りの加速の度合い」です。
加速とは、スピードを変えることですが、加速度と言えば、それがどれだけ素早く行われたか、その凄さを数値化したいので、速度の変化を時間(秒=s)で割ります。
なぜ“速度”センサーではなく、より難しい概念の“加速度”センサーかと言えば、「その方が計り易いから」です。
いや、車のスピードメーターは簡単ですよ、タイヤの回転数が分かるので。
しかし、それは地面という「絶対基準」があるから故です。
航空機になれば話は別で(*2)、宇宙空間ではもう何だか分からなくなります(*3)。
一方、加速度なら、「どこでも、どんなときでも分かる」のです。
それは、振動もなく滑走する新幹線の中で目と耳を塞げば、一体、止まっているのか一定スピードで走っているのか分からないのに対し、加減速時は必ず体に“慣性力”を感じる(物体が質量と加速度に比例した抗力を生む)現象です。
物体に働く力F[N] = 質量m[kg] × 加速度a[m/s2]
摩擦力だらけの地球上では、「運動する物体はやがて静止する」のが当たり前ですが、「物体は外力を加えなければスピードを変えない」「変えるスピードの分だけ反力を喰らう」のが宇宙の真理『慣性の法則』です(*4)。
真っ暗闇のジェットコースターでも、微小時間単位での加速度をセンシングすれば、速度はその積み重ね(高校数学の積分)なので計算プログラムで求まりますが、初期速度や累積誤差に対処する必要があります。
但し、地球上は最初から鉛直(Z軸)下向きに“重力加速度”(G≒9.8m/s2) が発生している特殊な場ですので、これを差し引いて処理しなければ、我々は延々と天空に打ち上げられっ放しになります。
X軸とY軸の加速度がともにゼロであれば水平、このときのZ軸加速度センサーで重力加速度を計測できます(*5)。
角速度は、回転速度のことです。回転数ではなく角度を使い、「単位時間当りの角度の進み具合」です。
角速度[deg/s] = 角度の変化[deg] ÷ 時間[s] (degは角度°のこと)
角速度センサーは、機械式ジャイロスコープに代わるもので、3軸(XYZ)あるので、あらゆる向きへの回転を検出できます(*6)。
こちらは、“角加速度”よりも先に角速度を直接読み出せるセンサー構成になっていますが、もちろん角加速度(高校数学の微分)も角度(積分)も計算で求まります(*7)。
角度を表示するサンプルプログラムが面白いですね。
机上の水平面内でどんな速さで回転させても、高精度に角度を7セグ表示したり(電子分度器?)、常に一方向を指す直線をLEDマトリクス表示したり(ラピュタ飛行石の光?)、
傍目(はため)に「何を手掛かりにして分かるの?」と不思議な感じを醸します。
あっ、それで、タイトルの『倒立振子』とは?
ほうきを逆さに立てて、手のひらの上で「おっとっと」とやる、アレです。
ロボットが片足で立ったり、一輪車を漕いだりする時代ですから、そんなこともできるんですね。次月以降も楽しみです。
*1 我々ロボット指導者が異口同音につぶやくのが、「子供の頃にこんな教室に通いたかった…」です。現役の皆さんは如何でしょうか。
*2 飛行中に先ず計測できるのは、対気速度(大気に対する速さ)であり、GPS等による計測技術なしでは、対地速度(地表に対する速さ)を割り出すのは簡単ではない。
大気には流れ(風・気流)があるので、両者の速度は一致しない。
*3 基準となる大地や大気がないので、速度も分からなければ気にする必要すらない場合もあります。アインシュタインの相対性原理の出発点です。
*4 この特性を利用したのが、だるま落としや、テーブルクロス引きです。
*5 センサーを傾ければZ軸の重力加速度がX/Y軸の加速度に分配(高校数学の三角関数)されるので、サンプルプログラム[inclinometer]のように傾斜角も導出できますが、一般的には角速度センサーを読み出す方が簡単で、安定(高速追従)します。
*6 一般的なMEMSセンサーでは、「コリオリの力を検出する振動型ジャイロスコープ」を組み込むようです。勉強しないと分かりませんね…。
*7 積分で求める角度(時々刻々の速度データを積算して移動距離を割り出すことに相当)には、累積誤差がつきもので、次第にずれが拡大していきますので、定期的なリセットや校正が必要です。
2. 今月の課題
次回授業日までに完了してください。◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。
<スタートアップ/プライマリーコース>
特にありません
<ベーシックコース>
○ オリジナル課題プリント(3面図+設問)
○ 上記授業内容を精読する
(概ね3年生以上/低学年は補助 or クイズ出題形式で)
<ミドルコース>
◎ オリジナル課題プリント(3面図+設問)
◎ 上記授業内容を精読する
<アドバンスコース>
○ 上記授業内容を精読する
<プロ1年目コース>
◎ 上記授業内容を精読する(該当テキストページを見ながら)
○ テルミンプログラム[USSTone2/3)を超音波センサーの特性に応じて調整し、
自分好みの演奏しやすい楽器に仕立てて遊ぶ
◎ 2日目テキストp.15チャレンジ課題のHSV→RGB色モデル変換式を考案する
(角度0~360によって決まる色相のみをRGB値0~100の比に変換する)
<プロ2年目コース>
◎ 上記授業内容を精読する(該当テキストページを見ながら)
◎ 2日目テキストp.14チャレンジ課題の[MatrixLineTurnDP]を±90°→ ±180°対応するよう改良する
《ハイレベル挑戦》何回転してもずっと一方向を指せるかな?
3. 今後の授業スケジュール
日付の()は臨時、!は原則外、?は予定の意です。
[東福間]第1・3土原則
- 10:30~ ミドル/アドバンス
- 13:30~ ベーシック/プライマリ
・2/4, 18, 3/4?, 18?, 4/1?, 15?
[東福間プロ]第2・4日原則
- 9:45~ プロ1年目
- 13:00~ プロ2年目
・2/12, 26, 3/12, 26, 4/9, 23
[中間]第2・4土原則
- 13:30~ ベーシック/プライマリ
- 15:15~ ミドル(/アドバンス振替)
なかまハーモニーホール
・2/11 第1回 2F会議室1
・2/25 第2回 3F会議室2
・3/11, 25, 4/8, 22
[小倉北]第1・3日原則
- 10:00~ ベーシック/プライマリ
- 13:00~ ミドル
- 15:00~ ベーシック第2部/アドバンス
ムーブ
・2/ 5 第1回 4F工芸室&5F企画ルーム1
※2/19 第2回 5F小セミ
・3/5, 19, 4/2, 16
※北九州マラソン日です。送迎の計画をお願いします。
―――――――――― 振替提携教室 ――――――――――
振替希望は1週間前までにお願いします(許可制)
振替手数料540円/回をご負担下さい(お引落し)
所定コースのみお受けします
[八幡東]第1・3土原則
- 13:30~ ベーシック/ミドル
レインボープラザ4F by 中野司先生
・1/7, 21, 2/4, 18, 3/4, 18, 4/1, 15
[とばた]第2・4土原則/第3土臨時
- 第2・4土 13:30~ 全コース
-(第3 土 10:00~ 全コース)
ウェルとばた8F by 菅本進先生
・2/11, 25, 3/11, (18), 25, 4/8, 22
[小倉南]第2・4日原則【4月正式開校】
- 10:30~ ベーシック
- 13:00~ ミドル/アドバンス(予定変更)
総合農事センター2F B研修室 by 中野司先生
・2/12(A研修室), 26, 3/12, 26, 4/9, 23
4. お知らせ
1) メール配信元ドメイン変更・ブログ読者登録リセット4月~メール発信元ドメインを変更(ezweb.ne.jp→gmail.com)予定です。
Gmailが拒否する特殊なアドレスから変更をお願いすることがあります。
また、ブログ読者登録も毎年4月にリセット・再招待させて頂く予定です。
2) 電池について
・単4乾電池4本(+ダミー1本)、または充電池5本(6V)を推奨します。
・電池不足が多く見受けられ、進行上の支障となっております。
電池チェッカー・予備電池を用意し、自ら残量の管理を。
・教室サービス時、原則として電池代4本108円+診断料108円を頂きます。
3) 小倉南教室(総合農事センター/中野司先生)4月正式開校
転属希望は前々月までにメール下さい。許可制です。
人数調整の為、数ヶ月お待ち頂く場合があります。
また、将来的に教室を移転する場合があります。
東福間/中間/小倉北 ⇔ とばた/八幡東/小倉南/新下関 では振替手数料が発生します。
転属手数料はありません。
4) 宿題ポイント交換会【ベーシック・ミドルのみ/中野司先生協同】
2月第1回※「授業前」に景品交換します。その後も3ヶ月毎に予定します。
※小倉北は第2回
5) 12月課題 高得点者 []内は教室と学年
◆ベーシック【22名平均 図面2.5+設問3.1=5.6】
10点…橋本[小倉北2]
9点…佐藤[東福間3], 吉良[小倉北5]
8点…荒木[小倉北2]
◆ミドル【19名平均 図面1.8+設問1.8=3.6】
10~8点…なし
7点…山本[中間4]
6点…岩熊[中間5]
東福間・中間・小倉北教室 佐藤