2.今月の課題
3.今後の授業スケジュール
4.ひと言
1. 5月授業内容
1.0 <スタートアップ>
割愛します。
写真のギアトレーンは、生徒さん自身による、自動車を増速(テキスト設計の減速比1/9から緩和)させた改造例です。
どちらが速く走るか、分かりますか?
1.1 <プライマリーコース『ロボコング』>
割愛します。
1.2 <ベーシックコース『ロボクリーン』>
おそうじロボットです。
90°ずつ向きをずらした9本の赤い“ブラシ”を高速回転させる様がにくいですね!
吸引こそしませんが、あのロボット掃除機『ルンバ』を彷彿(ほうふつ)とさせます。
掃除機として、大事な工夫点があります。
ブラシは高速回転させたいが、本体の走行スピードは…?
疾走(しっそう)されては困るので、ゆっくりタイヤを回さなくてはなりませんね。
この相反する要求をどうやって1つのモーターで実現するかです。
部品配置は、モーター ⇒ タイヤ ⇒ ブラシ の順に並んでいます。
回転速度は、速い ⇒ 遅い ⇒ 速い です。
つまり、モーターを一旦減速してタイヤを回した後、増速してブラシに伝える構成が必要であり、それが筐体(きょうたい)の側面に並んだ大小6枚のギアの役割なのです。
3連のピニオンギア(歯数8)がタイヤと同軸のギアL(歯数40)を回すので、1/5に減速されます。
その後、ギアM(歯数24)を経由してブラシと同軸のピニオンギア(歯数8)を回します。
途中のギアMは気にせず(*1)、ギアL ⇒ ピニオンギア と考えて、5倍の増速になります。
つまり、1/5×5=1で、モーターと同じ回転数(等速)に戻してブラシを回しているのですね。
2日目最後の競技は、ガチンコおそうじ対決!
対向させた2体の進路上に、小さく丸めた紙片を散りばめ、「よーいドン!」でゴミの争奪戦(!?)です。
両者がぶつかり、動かなくなった時点で内部に取り込めたゴミの数を競います。
皆さん、対戦になると燃えるのよね~。
「インチキ!」「フライングした!」「約束と違う!」だの、レフェリーがいないと勝負が付かず大変です。
時間いっぱい改造に勤(いそ)しむ人もいて、なかなか決勝戦までたどり着きませんでした。
このロボットで苦心するのは、赤いブラシが(当然に)固いプラスチック部品であり、柔軟性がないので、筐体との隙間にゴミが挟まってブラシが止まりやすいことです。
高速回転(増速)させる分、回転力(トルク)が弱いので、たやすく停止します。
この問題を解決しようと、すばらしいチャレンジも見られました。
ブラシの毛(クロスジョイント)が固いのは仕方がないので、シャフトに“半固定”し、毛一本一本の回転力を弱めるアイデアです(*2)。
1) クロスジョイントをシャフト(十字形断面)の回りに固定するのではなく、自由にぶら下がるよう、十字穴ではなく丸穴に通す
2) クロスジョイント同士が密着するよう、ブッシュやグロメットで隙間を埋める
これには、
・詰まらない限り、全ての毛がシャフトと一緒に回転する
・詰まった毛だけ止まり、ブラシ全体の回転を止めない
という設計思想がしっかり体現されています。
肝心のゴミ取り性能は、時間内では今一歩でしたが、何か問題に直面した時、限られた部材(キット)の中でも「何か解決方法がある」という好例です。
他には、毛として、回転シャフトに輪ゴムか結束バンドをくくり付けてはどうでしょう。
内部の汚れが問題になるほどゴミが取れてしまうかもしれませんよ。
*1 ギアMを気にして計算しても、40/24×24/8=40/8=5 と同じです。間にギアMを挟んでいる理由は、回転方向と位置を調整するためです。
*2 スリップトルク(滑り摩擦力を利用した回転力伝達)や、トルクリミッター(回転力制限装置)呼ばれる機械要素です。
1.3 <ミドルコース『アメンロボ』>
アメンボのような動きで進みますが、推進原理は異なります。
ミドルコース随一と言っていいくらい、突き詰めれば高度な学習テーマに満ちた、難しいロボットです。
4脚キャスター付き椅子のように、X字に交差させたロッドの先端4箇所に、自在に向きを変えるタイヤSを取り付け、ロッドの交差点に本体を載せています。
1日目では、モーターで回転するクランク機構(*3)により、ロッドのX字を閉じたり開いたりする動きを実現しました。
製作はこれでほぼ完成なのですが、タイヤSはその向きがX字の開閉に合わせて阿波踊りの手先のように自在変化するだけで、一向に進む気配がありません。
どうしたものでしょう。2日目までの課題にしてみました。
よく観察すると、タイヤは向きを変えているだけでなく、少し転がっては逆方向に戻る動きも見られますので、学習経験を生かして、
「ラチェット機構により回転を一方向に制限してやればいい」
というアイデアもありますが、前進させるまでには至らないようです(*4)。
2日目のテキストを配り、前輪同士と後輪同士をくくるように2本の輪ゴムをキャスターの根元に掛けました。
するとどうでしょう。輪ゴムがキャスターを内側に引っ張ることで、タイヤの向きが前後方向に“ほぼ”揃いました。
スイッチを入れてみると、1日目が嘘のようにスイスイ進みます。
X字の開閉に合わせて、床面との摩擦により、前後輪とも、ハの字 ⇔ 平行 ⇔ 逆ハの字の形を繰り返します。
X字を開く力は、左右両輪を前方に向かって開かせ(逆ハの字)、
特に後輪(*5)が平泳ぎで水を(スケーティングで雪や氷を)掻くように、推進力に変換されています。
X字を閉じる力は、左右両輪を前方に向かって閉じさせ(ハの字)、
特に前輪(*5)で地面を抱き込んで後方へ追い遣(や)るように、推進力に変換されています。
輪ゴムの弾性力により、
(1) タイヤを前後方向に緩やかに揃える
(2) 地面との摩擦力でタイヤの向きが変化するのを少しだけ許す
ことが功を奏しているのです。
実際は、ここに書く程に簡単ではなく、X字リンクの歪みやタイヤの摩擦からくる開閉の重たさ、輪ゴムの強さ(*6)に起因して、推進させるまでに苦労し、競技する余裕もない難題でした。
ラチェットは使いませんが、タイヤが後ろに転がる瞬間があるようなら、それを阻止することで推進効率が上がるかもしれません(*7)。
*3 回転軸の回りで円形運動する別の回転軸をジョイント(関節)とするリンク機構で、回転運動⇔往復運動を変換する。手回しハンドル、自転車のペダル、ピストン式エンジンが主な利用例。
*4 過去に考案した生徒さんがいましたが、そもそもタイヤの向きがバラバラなので失敗しました。
*5 X字の開閉によってキャスターが前方へ運ばれる方。
*6 輪ゴムが弱ければタイヤの向きが定まらず、強ければモーターの力負けで停止します。
*7 下手をすると前進の摩擦も増えて効率が下がるかもしれません。
1.4 <ロボプロコース『オムニホイールロボット(2)』>
1ヶ月目に製作したオムニホイール(Omnidirectional Wheel;全方向車輪)ロボットの動きの原理を理解し、思い通りの動きをプログラム上で指示できるようになるまでの2ヶ月目の授業です。
1日目は、改めてオムニホイール(車輪)の仕組みを考察し、3つの車輪を任意の速さ・向きに回したときの進行方向が“力(ベクトル)の合成”によって求まることを学びました。
ここでのベクトルは、車輪の回転の向きと速さを、それぞれ矢印の向きと長さで(紙面上に)表したものです。
2つのベクトルの合成は、まず作用点(ベクトルの始点)を重ねて、それが平行四辺形の2辺を形成するようにもう2辺を描き足し、作用点から発した対角線(=合力)の向きと長さで表します。
3つのベクトルを合成するには、任意の2つを合成した後、その合力と残りのベクトルをさらに合成します。
様々な練習問題を製図して解きつつ、プログラムの数値に反映して動きを確かめ、どんな3輪の回転の組合せでも、ロボットの進行方向を求めることができるようになりました。
2日目に、ロボットの回転する動きを考察します。
1日目では、進行方向を割り出すことができましたが、ロボットが向きを変えずに移動(=並進運動)する場合は、これで十分でした。
しかし、実際は互いに離れた3輪による作用点(ベクトルの始点)を一点(例えば、ロボットの中心)に集めて合成するために、本体が回転しようとする力(モーメント)を扱うことができませんでした。
例えば、3輪とも同じ速さで時計回りに回転させる場合、ベクトルの合成結果は長さゼロの“点”となって、ロボットが移動しないことを言い当てますが、実際の動きは、移動こそしないものの、その場でぐるぐる回り続けます。
この回る動き(=回転運動)を予測できるようにします。
レンチやスパナを想い起こしてください。
支点(回転中心)のある物体に対し、支点から離れた場所(作用点)に、(支点に向かう向きとは異なる)力を加えると、物体は支点の周りで回転します。
この物体を回そうとする作用力を“モーメント”といいます。
支点と作用点の間の距離を単に“長さ”と呼ぶと、
[モーメント]=[長さ]×[力の大きさ]
という関係があり、長いほど回す作用が強くなるという、てこの原理を表しています。
オムニホイールは、3輪とも円周上(円形ボードの縁)に取り付けられているため、円形ボードの中心を支点としてロボットの回転を考えたとき、各ホイールまでの[長さ]が全て等しいので、オムニホイールロボットの[モーメント]を推し量る上では、[力の大きさ](今回はホイールの回転スピード)だけ考慮すればよいことになります。
難しく述べましたが、簡単には、時計回りと反時計回りの回転スピードを差し引きして、ゼロなら回転せず、ゼロ以外ならその値の分だけ優勢な方向に回転する、と言えるのです。
オムニホイールロボットがカーブの軌跡を描いて移動するとき、並進運動だけで実現すれば、飛来するUFOのように向きを変えず、並進運動+回転運動を組み合わせれば、自動車のように自然に曲がることもできるのです。
3つのオムニホイールが生み出す、どんな複雑なロボットの動きも、
“ベクトルの合成”で求まる並進運動と、
“モーメントの合成”で求まる回転運動とに分解して説明できるのです。
最終の3ヶ月目では、このロボットに“触覚”と“頭脳”を植え付け、ロボカップに通ずる自律型ロボットに仕上げます。
2. 今月の課題
次回授業日までに完了してください。◎は必須、○は推奨、△は任意です。○△は能力に応じます。
<スタートアップ/プライマリーコース>
特にありません
<ベーシックコース>
○ 4面図スケッチ(専用方眼紙)
○ 見取図スケッチ(テキスト最終ページ/難しければ写真の模写から)
○ 上記授業内容を分かるまで音読する
(概ね3年生以上/低学年は補助 or クイズ出題形式で)
<ミドルコース>
○ 4面図スケッチ(専用方眼紙)
○ 見取図スケッチ(テキスト最終ページ)
◎ 上記授業内容を分かるまで音読する
<プロフェッサーコース>
◎ 上記授業内容を分かるまで音読する
◎ テキストp.23のチャレンジ課題3を製図して動きを予測し、サンプルプログラム[Challenge2]をベースに数値を書き換え、確認する
3. 今後の授業スケジュール
[東福間]第1・3土
- 10:30~ ロボ・ミドル
- 13:30~ ロボ・ベーシック
6・7・9月は原則通り、8月は7/30, 8/20の予定です。
[東福間プロ]第2・4日
- 9:45~ ロボ・プロ1年目
6・7・9月は原則通り、8月は8/7, 28の予定です。
[中間]第2・4土
- 13:30~ ロボ・ベーシック/プライマリ
・6/11 第1回 3F会議室2
・6/25 第2回 3F会議室2
6・7・9月は原則通り、8月は8/6, 27の予定です。
[小倉北]第1・3日
- 10:00~ ロボ・ベーシック
- 13:00~ ロボ・ミドル
- 15:00~ ロボ・ベーシック第2部
・6/ 5 第1回
・6/19 第2回
10:00~ 5F小セミ(ベーシック/プライマリ)
13:00~ 5F小セミ(ミドル)
15:00~ 5F小セミ(ベーシック/プライマリ第2部)
プライマリは幼児向け6ヶ月コースです。
6・9月は原則通り、7月はムーブフェスタの為、7/3, 31となりました。予定変更で申し訳ありません。
8月は原則通り8/7, 21ですが、8/21は代替施設『商工貿易会館(シティプラザ)』での開催となります。
4. ひと言
今年もベーシック・ミドルコースのアイデアコンテスト全国大会の時期が近づいてきました。6月授業で案内冊子を配ります。オリジナルロボットを考案し、7/21(木)九州本部必着にて、所定の応募用紙・プレゼン動画(3分以内)を提出します。
ベーシック・ミドル部門別で選抜しますので、ほぼ1回限りのチャンス!
有志は果敢に挑戦して下さい。
8/20(土)に東京大学で開催の第6回ロボット教室全国大会は、生徒さん・ご家族を優先に、下記HP上で観覧申込みもできます。7/4(月)正午~受付開始です。
http://kids.athuman.com/robo/event/convention/2016/
詳細はご遠慮なくお問合せ下さい。
東福間・中間・小倉北教室 佐藤